The Beautiful Game

2023.1.23

13時公演、人生初、夢だった日生劇場が私の初日。

2023.2.5  

13時公演、1週間前に急に思い立って入った大阪日帰り観劇。結成日で晴香ちゃんのお誕生日公演。

2023.2.12

13時公演、最初で最後の2階席。

2023.2.13

13時公演、大千穐楽

 

イギリス領北アイルランドの首都ベルファスト
街はIRA(北アイルランドの独立を訴える組織でカトリック派)の活動が日増しに盛んになり、宗派の争いは街を分断していた。
それでもここで暮らすサッカーを愛する人々は、試合を「ザ・ビューティフル・ゲーム」と呼ぶ。
彼らにとって自分たちが応援するチームの試合は最も大事なものであり、彼らの人生そのものだった。
ジョンはそんなサッカーチームのエース選手であり、将来はプロサッカー選手になることを夢見ていた。
ジョンとチームメイトのトーマス、ダニエル、ジンジャー、デルたちはサッカーに青春を捧げ、チームの監督であるオドネル神父による厳しいトレーニングの元、国内リーグでの優勝を目指して毎日汗を流していた。
スタンドに座るメアリー、クリスティン、バーナデットら女の子たちは、それぞれの意中の若者たちに声援を送っていた。
しかし街はカトリック派とプロテスタント派の争いが日増しに激しくなり、ジョンやチームにも不穏な空気が忍び始めるのだった。
サッカー選手になる夢、愛する恋人との幸せな未来、仲間たちとの変わらない友情。
逆らうことのできない運命は、ジョンに人生を大きく変える選択をせまることになり……。

「ザ・ビューティフル・ゲーム」/公式サイトより引用

 

あまりに特別なものに出会ってしまった。

千穐楽を終えて、空港行きのバスで一人しみじみそう感じた。

それから数日が経って、本当は個人的初日を迎えた後から綴ろう綴ろうとは思っていたのだけれど、どうしても心が追いつかなくて、まとまった、ちゃんとした文章を綴れる自信がなくて、大千穐楽を終えて数日経った今、やっと少しは想いを言葉にできるかなって思って綴り出したわけです。

 

人生初めてのミュージカル。4回しか観劇できなくて、まだまだ体がザ・ビューティフル・ゲームを求めてる。寂しい。今とてつもなく寂しい。もうどこにも彼らのベルファストはないんだと、今日更新された小ゴトの小瀧くんのお写真を見て改めて痛感した。大千穐楽を終えてからずっと演者さんたちのSNSを追っていて、彼らの発信するものが段々と日常みを帯びてきた辺りから感じてはいたけど。というか、大千穐楽を終えたあの瞬間から思ってはいたよ。ただ、もうどこにもないっていうのがあまりにも寂しくて、独り言のように呟いたきり言うのをやめたってだけでね。なくなってしまった、けど、私の中には彼らと彼らが過ごしたベルファストが生き続けていくので、実質これからの私の人生、彼らと共にあり。という。なんと素敵。ずっと無くさないよ、これからも一緒に生き続けよう。と、まるで締めの一文のようですが、ここからです。たくさん残したいことがあるの。重岡くんの言葉を借りると、「忘れないなんて忘れてゆくから」ということで、忘れないって思ってても忘れたくなくても、悲しいことに人は忘れてしまう生き物だから、こうして私の中にある内に全て綴っておきたいのです。

 

まずね、何から残していこうかな。初日の衝撃からかな。重岡担のお姉様とミュージカル連番させていただいたのですが、心を日生に置いてきてしまうくらいの衝撃を受けたんですよね。個人的にエレファントマンより引きずってしまうような衝撃。おいそんなわけないだろ、という意見しか出てこない気がしますがここは私の独り言の世界なので悪しからず。とまあ、エレファントマンの帰り道も散々わんわん泣いて友達に介抱してもらったのは記憶に新しいものですが、それとこれとはなんだか別というか。MORESの時もそうだったんですけど、基本私っていう特殊な人間は小瀧望くんという人間を近くに感じると泣いてしまうものらしく、カテコで小瀧望を感じると帰り道感情溢れてわんわん泣いてしまうんですよね、非常に困る性質。一人だと頑張ってなんとか耐えるんですけど(MORESの時は年齢もあって途中までの一人の道のりですでに泣いてた)隣に心許せる人がいたらわんわん泣いちゃうから、非常に連番相手さんに申し訳ない。MORESとエレファントマンの時は小瀧望を感じて泣いてた私だったんですけど、今回はミュージカルに心持ってかれすぎてボロボロ泣いてた感じ、感覚的には。その中に小瀧くんに会えて嬉しいの涙も少しは含まれてはいたけど、ミュージカルに対しての激重感情で泣いてた。日生からホテルまでの道のりでめちゃくちゃに泣いてる私を静かに優しく見守ってくれたお姉様には頭が上がりません。帰り道もたまに喋ったと思ったら感想共有で、感想喋ったことによってまた泣いて、と完全に屍だった。本当にごめんなさい...()

それだけ私には衝撃的だったんですよね。どんな感じに衝撃的だったのかとかはこれから楽曲順に語っていきたい所存。まだまだここから残していくぞ。久しぶりに文章綴るのがすごく楽しい。一種のリハビリ。

 

ではでは内容に触れていこうかな。

初日観劇前に今回のミュージカルの題材である北アイルランド紛争についてほんの少し大まかに把握してから入りましたが、把握しといてよかったなって思った。まあパンフレットでも触れてくれているので、そこを読めばだいぶわかりやすいのですが。カトリックプロテスタントIRA北アイルランド、イギリス、その歴史。私の知らない事ばかり。把握してから入ったおかげで、物語もだいぶわかりやすかったし、初手の緊迫したアナウンスと若者たちの争いも飲み込めた。ベルファストではカトリックプロテスタントの争いでサッカーを気軽にすることもできずに、銃を向けれられ、壁をよじ登って逃げ、逃げられず捕まる若者たちがいる。そういうベルファストの現実を見せつけられた初手の一幕。

 

※セリフは全部ニュアンスで捉えてください

 

ACT1

【♪The Beautiful Game ビューティフル・ゲーム (全員)】

そして私がガシっっと心掴まれた一曲目。特徴的なイントロに合わせて続々舞台上に現れるキャストたち。そしてそのどセンターで歌う我らが小瀧望ジョン・ケリー。余談ですが足が相変わらず細くて美脚で惚れ惚れ。ショートパンツの男たちは最高!!!(先走り)と、話の道がずれましたが、あまりにも心掴まれる一曲目だった。歌ってだけで心動かされるものなのに、キャスト全員の力強い歌声のハーモニーでずんっと心臓をぶっ刺された感覚。ここですでに心を奪われてしまって目は舞台上に釘付け。体は動かなくて、動かそうとも思わなくて、でもそれが心地よくて。体験したことのない時間だった。「我らが誇るサッカーを」の「サッカーを」で足をドンドンドンってするのがめちゃくちゃに好き。興奮する。イントロ聞くだけでぶわあって鳥肌立っちゃうくらいに好き。あとトーマスは足が長すぎてる。ジョンが小さく見えるのが怖い。大千穐楽では今まで私が入ったどの公演より勢いが凄かった気がするけど、足を地面に叩きつける勢いとか。でもこれは大千穐楽マジックなのかなとも思いますが(笑)

このシーンでは実際にサッカーボールを使っていて、曲の終わりにジョンが下手にゴールを決め込んだのが、彼がエースプレイヤー!という感じ。カッコ良いよジョン。12日やっと上手側のお席に入れたので、彼がボールをゴールにしっかり入れ込むのが見えて嬉しかったという余談。あと、「聖母マリアの子たちよ」という歌詞が入ってるから、この曲はカトリックプロテスタントもどちらも歌える曲だなあ、なんて今ふと思いました。

 

曲終わり、オドネル神父が「このチームはクソだ!」(ニュアンスの極み)と罵倒しながら主要メンバーの名前呼んで前に立たせていくわけですが、ここら辺からニールとにやにやコソコソ話してたり、トーマスとも何か話してたりと細かい演技が多くて何公演入っても足りない。「豚みたいに涎を垂らしてる相手はメアリー・マグワイアか?」の神父様からの問いかけに「はい...ってちがいます!!」なのがめちゃくちゃピュアで可愛いジョン。一回冷静に飲み込んでるの可愛い。「もしそうなら腕をへし折ってやります!!」なツンツンメアリーも可愛くて萌えポイント。そこから「女はお前のパワーを吸い取る」という何とも偏った見方をする神父様に「吸い取られたいんです!!!」と返すジョン。周りみんなドン引きしてて面白かった(笑)いや、吸い取られたいんかいっていう(笑)そりゃチーム全員の靴磨きやらされるわけです。不憫でおバカなジョンは可愛い。

あと、全編通してなんだかんだトーマスと神父様のコンビわちゃわちゃやってて可愛いので好きなんですが、個人的初日の時より、梅田の12、13入った時の方が「メガネはテープで止めたか?」の神父様の問いに対しての返事が元気いっぱいで可愛くて好きでした。はい!とかじゃなくて、あ"ぁい!!!!な感じ。実はお茶目なトーマス。だと勝手に思ってる。

そして私はずっとシンジャーとバーナデットが大好きなので、ジンジャーが神父様に呼ばれたとき彼はなかなか気づかなくて、バーナデットが「ジンジャー...!」って声をかけたら「は...!」となる感じ、可愛いすぎるだろう。好きだ。そしてバーナデットからの熱くて若くて可愛らしいラブコール「ジンジャー頑張って!!!!!」の後にハッと、私言っちゃった...。みたいな大きくお口開けて目も見開いてる感じがピュアで愛おしい。

次はデルが呼ばれて彼が前に出た時からすでにトーマスは嫌そうな表情浮かべる。(これに気づいたのは3回目の観劇)ここのとんちゃんの演技細かくて良いなあって思いました。これぞなまものの良さ。ツイッターの方にもぽつぽつと呟いていたのですが、なまもの作品の良さって一人にフォーカスされないところで、自分が誰にフォーカスするかによって主人公が、見方が変わるところだと私は思っていて。舞台の上ではその世界の登場人物一人一人がそれぞれの人生を歩んでる。何かを感じていろんな表情を浮かべてみんなそこで生きている。そんな彼らの行動ひとつでも見逃したくなくて、新たな発見をしたくて、彼らの人生を見ていたくて、劇場に何度も通ってしまう。4回じゃとてもじゃないけど足りませんでしたね...。観劇するたびに目が足りないって嘆いていたくらい。

この後「神様はアイルランド人です!」「神様はカトリックです!」「神様はビューティフルゲームをします!」と声を揃えるシーンで「神様はカトリックです!」の時にはデルがそのセリフだけ口を閉ざしているのが非常に印象的だった。こういうところも細かくて繊細な表現。

 

【♪The Boys in the Photograph 写真の中の少年たち(メアリー/女の子たち)】

チーム全員で写真を撮っておこうと、神父様が写真を撮ってくれるところから始まるこの曲もめちゃくちゃ好きなんですよね。歌詞もメロディも曲中の神父様のお言葉も、まるっと好きなシーン。「写真が全てを写し出す 彼らの旅路を」の女性陣の優しいハーモニーが心に溶けていく感覚。「どこにいるんだろうその時彼らは」という歌詞は2回目以降の観劇で少し泣きそうになるところ。「世界は憎しみで満ちているが、そんな世界で堕落するな、負けるな。自分に正直でいろ。青春時代の約束に忠実であれ。この写真に写っているのが本当のお前だ。どんな大人になるかはお前たち次第だ」神父様がやっと神父様らしいことをした一幕()いや、正直めちゃくちゃ刺さったんですけど。私自身写真がものすごく好きで、一眼とフィルムカメラを高校で何かイベントがあるたびに持ち歩いてた人間なので写真には思い入れがありまして。このセリフはラストシーンにおいてとても重要な役割をするセリフなので、そういう意味でもすごく刺さって大切にしたいセリフなんですけど、それとはまた別の特別を感じたセリフだったなあとしみじみ。

 

【♪Clean the Kit 雑用はうんざり(ジョン/トーマス/メアリー)】

「オドネル、今に見てろ!!」から始まるジョンの力強い声色に初見思わず目が飛び出そうになった。君の声はよく通るから舞台向きだと何度も言い続けてきたけれど、こんなにそれを実感できる瞬間ってある...?ってくらいに真っ直ぐ伸びていくジョンの歌声。綺麗だった。ものすごく。熱くて力強くて勢いのある歌声。小瀧くんって本当努力の人だなあって、まず最初にここで泣きそうになった。というか初日はうるっときてしまったよ。他がどうだとかそんなの私には全然関係なくて、ただただ目の前にいる人の努力の結晶で作り上げられた真っ直ぐな歌声が美しかったの。声量お化けだったなあ。

あと、トーマス、アラナン、ハリーの悪ガキ3人がデルを罵倒するシーンの後ろで、ジョンが引き続きシューズ磨きをしていたのだけど、トーマスが踏んだ糞をベンチにこすりつけて落としてるのが個人的にツボでしたね。そんなとこに擦り付けるな(笑)

そしてこの曲でまず一つ目!メアリー可愛いポイント!るんるんで部屋に入ってきて、ジョンを見つけた瞬間めちゃくちゃ嬉しそうな表情浮かべたのに、ジョンの前に出てきた瞬間「プロになるって!?馬鹿馬鹿しいわ!スターになんてなれるはずない!」ってツンとした顔して歌い出すのがもう、もう、ツンデレの極み。可愛いすぎるよメアリー。その後神父様が現れて「お前がいるのを見られたら殺される!!」と軽々ジョンに抱き上げられるメアリー。非常に萌えでした。神父様、この場に現れてくれてありがとうの気持ち。「おっぱいがデカくて頭の悪い女たちが」っていう神父様のセリフに合わせておっぱい大きいのジェスチャーするジョンは毎公演可愛いくて双眼鏡タイムでしたね。

 

【♪Don't Like You 好きじゃない(ジョン/メアリー)】

この曲、TBGの曲の中でもトップレベルに好き。若々しくてきらきらした恋そのもの。尊いとはこの事だと思い知った。「だーーーーいきらい!」から始まるよく通るメアリーの声。そのだーーーーいきらい!の勢いに押されまくるジョンが可愛くてですね。「私あなたと生きていけない」って歌詞が地味に刺さるんですよね、これからの展開を思うと。そんなこと言ってたツンデレな少女は、愛する人がどんな状況にいてもどう変わってしまっても一緒に生きていこうと歩み寄る芯の強い女性になるんですもの...。

話は戻して、その後に「だって、いい男はほーかにいるっ♡」の歌詞で両手を組んで顔の横に持っていききゅっと首を傾げる可愛らしい動きをするんですけど、ジョンもその後に「だって好きな女はほーかにいるっ♡」って歌いながらメアリーの可愛らしい動きを真似するんです可愛い可愛い可愛い。そしてその真似されたことにムカッとしたのかプンスカ顔になるメアリーも総じて可愛い。このシーン可愛いが詰まりすぎてて感想の9割可愛いになってしまう。許してください。そして一番好きな掛け合いが「ムカつく、ブサイク、つまらない!まともに会話もできないの!?こう見えて頭は空っぽ!?」「じゃあなんで電話かけてくるの!?」「あなたからかけてきたんでしょ!」「ただひとつだけ気が合うこと」「「好きになれない!!」」です。個人的初日観劇前にパンフ読んでたんですけど、瀬戸山さんと小瀧くんと木下ちゃんの対談でも話題に上がってたところで、ここか!ってふふっとなったシーン。めちゃくちゃに悪口言われてるジョン不憫で可愛い。ムカつく ブサイク つまらない のスリーコンボ。でもこれもまたメアリーの照れ隠しだと思うととんでもなく可愛いんですけどね。私が思うに、この悪口連呼の前のジョンのパートが「好きな女は他にいる」なので、嫉妬しちゃったのかなと。そりゃ悪口連呼になっちゃうよねメアリー♡(笑)この後曲の間奏中にジョンがじわりじわりとメアリーに寄っていって肩を抱こうとするけどメアリーに逃げられ、それでもジョンはめげずにメアリーに向き合って腰を抱こうとするけど緊張したのか手を引っ込めて、でもメアリーがそのジョンの手を自分の腰に戻して。はあ。なんて甘酸っぱいの君たち。

「嫌いじゃない、悪くはないな」「まあ...他よりマシな方かな」「言ってよ」「お前が」「好き...っちゃ好き、かも」「きっとなれるわ、友達になら」「ただの友達?」の流れもたまらなく甘酸っぱい。顔がきゅうってなっちゃう。「好きよ」「俺も」「「この気持ちは マジ」」「あなたを」「お前を」「「恋人として」」唐突なマジという歌詞に笑いそうにはなりますが二人が愛くるしいシーン。この後二人のファーストキスなんですけど、神聖なものを見ているかのような気持ちになりました。というか、あれは神聖なものだったな間違いなく。初見で双眼鏡構えたかったけど、周り見渡して無理だ...!ってなっちゃったの少し後悔。ただその代わり残り3回はしっかり双眼鏡構えましたけど。初見の時一緒に観劇したお姉様から後日「最初のちゅーからもう手が動いてるのが見えてしまったwwwww」って言われてめためたに恥ずかしかった(笑)

「ちょっと、くっつきすぎ!」ジャンッと効果音がなって暗転。ツンデレメアリーを最後に次の場面へ。

 

この後はダニエルの可愛いシーン。車の部品を盗んでいて試合にこなかったダニエルを巨人たち(ジョン、トーマス、ジンジャー)が囲む図がめちゃくちゃ可愛い。ダニエルちゃんちんまくてヨシヨシしたくなっちゃう。そういえば、12日に入った公演で可愛いアドリブがありまして。ダニエルに「このラジカセ(盗品)売ったら金になるんだけど、一杯どう...?」とパブに誘われたけど、(トーマスジンジャーはもちろんだと行く気満々)メアリーという名のジョンの飼い主から「ジョ〜〜ン〜〜〜???」とお呼ばれかかって「俺は君とデモ行進にいく!居心地の良いパブで酔っ払うより〜...」ってセリフの時にいつもはそんなことしてないのに、この日はジンジャーとトーマスにがっつり体ホールドされてて「行かせない!」っていうジンジャーとトーマスの強い意気込みが見えて可愛いアドリブでした。(ダニエルちゃんはジョンの服引っ張ってて可愛いだった)「解放されたらこいよ」っていうトーマスからの言葉に小さく頷きながらも、メアリーと二人きりになれたジョンはいかがわしいことする気満々。めちゃくちゃに情熱的な長ーーーいキスをジョンから仕掛けるのに、そんなジョンとは裏腹にデモ行進にいく気満々のメアリー。(いうてメアリーもしっかり受け入れてたやんとも思いつつ)「私たちカトリックはこの街では二級市民なの!そのことに不満を感じてないの!?」「ああ、ものすごく不満を感じているよ...」のセリフが最高に不満げで可愛かった。そういえば長いキスシーン、何気に吐息がえっちで危うかったな。完全に二人の世界。そして言い合いしてたのにいきなり甘い声で「ダーリン、周りを見てみて」なんていうから心臓撃ち抜かれかけたよジョン。ダーリン。良い響き。小瀧くんの声で聞ける「ダーリン」で救われる命がある。その後のセリフは「ここはゴミ溜めだ」なんですけどね。そのままトーマスたちを「待ってくれー!」って言いながら追いかけていなくなるジョン。「ゴミ溜めじゃない」と呟くメアリーが切ない。メアリーは誰よりもこの国を愛しているんだなと感じ取れるシーン。

場面が変わって「カトリックに平等な権利を」と署名を集めるメアリーに「夢想家ね」と吐き捨てて通りすがりの人たちが去っていくけど、私から見たメアリーは現実を受け入れた上で自分に何ができるかを考えて行動できる人間で、夢想家というより現実をちゃんと見据えている人なんじゃないかと感じる。けれどこちらが想像しているよりも遥かに大きな紛争が起こっている街だという時代背景を考えたら、夢想家だと言われてしまうんだろうなとも思いました。夢想家が悪いわけじゃないと私は思いますが。と、ぽつぽつ色々考えを巡らせている中で思い出したのが、パンフの中でお三方が対談してた中でこの話題出たなと。今軽く見返してみたら、「夢想家と言われるような人の方が広い視野で現実を見てる、理想を求めるなんてくだらないと言ってる人の方が目先のことしか見えてない」と瀬戸山さんが仰られていて、まさにそれだ!私が言いたかったこと!となりました。まさにそういうこと。そりゃ答えは作り手にある。

 

【♪God's Own Country 神の国(メアリー/少女)】

「夢想家じゃない、ゴミ溜めじゃない。ここは、私たちの国よ」のセリフから始まるメアリーとプロテスタントの少女(しゃけちゃん)のデュエット曲。私はこの曲もすごく好きで、一回頭に流れ出すと止められないくらい好きな曲。「暗闇の中、歌声が 雨風ささやく歌」の歌詞から入ってくるしゃけちゃんの歌声でぶわあっと毎回頭のてっぺんから鳥肌立ってたなあ。それは決してメアリーの歌声の比較しているわけではなくて、ただしゃけちゃんの歌声が特別私に刺さったというだけのお話。メアリーはカトリックを象徴するエメラルドグリーンのユニフォーム(ジョンのもの)を握りしめて、プロテスタントの少女はプロテスタントを象徴するオレンジのユニフォームを握りしめて、「「わが国 神の国 わが アイルランド/イギリス の民と共に」」「「アイルランドは私の国よ 海岸から海まで すべてが」」と歌う二人。同じキリスト教でも宗派が違うなのに、祖国を思う気持ちは同じだというのになぜ分かり合えないんだ...しんどい...と、改めてカトリックプロテスタントの対立を実感させられる曲。ただこのシーンは私にとって、木下ちゃんとしゃけちゃんのデュエットがあまりにも美しいハーモニーだから、歌詞に対立的だと感じつつも二人の雰囲気に呑まれて穏やかな気持ちになるシーンでした。

 

おふたりがはけたあと、トーマス ダニエル ジンジャー ニール(ニールはアクロバット披露したあとすぐはけちゃうから実質トーマス ダニエル ジンジャーのみだけど)がサッカーの練習してて、クリスティンとバーナデッドはその三人を見てる、という場面に。ここはなんてったってミュージカルが終わりに近づくにつれてアドリブが増えていったシーンで、トーマス可愛いよコーナー!「もう練習は始まってるのになんでジョンがいねえんだ!」と練習に遅刻しているらしいジョンに既にイラついてるトーマス。「メアリーの支配から抜け出せないんじゃない~」とダニエル。そんなダニエルに対して無邪気に「ジョンに恋人がいるのがそんなに羨ましいの!?」と尋ねるバーナデッド。声色が明るくて純真で可愛らしい。「羨ましいに決まってるよ!同じ18の年なのに俺はナショナルグラフィックに載ってるおっぱいを探してる!」なダニエルにもきっと素敵な子が見つかりますよ…!だって君はほぼ天使!天使なんかじゃないってジョンには後半言われるけど、君はなんたって友達想いなのだから!なんて思うシーン。そして遅れてきたくせにメアリーと手を繋いで「いよいよ明日は決勝戦だ!俺たちは勝つ!メアリー、絶対勝つんだ!」なんて元気いっぱいメアリーといちゃつくジョン。そんな二人に「いちゃつくのやめろ!」なんてセリフをトーマスが吐くのですが、この言い方が日生の時は「いちゃつくのやめろ!!!」と語気強めで声荒げてる感じだったのに、5日に入った時は「いちゃつくのやめろぉ!」と子どもっぽい可愛らしい言い方になってて、はわ、、かわ、かわいい...。となってしまった。トーマスへの沼は近い。この後のアドリブは日生と5日はなかった気がする。指摘を受けたジョンメアちゃんが離れて話が進むのが通常。な、の、に!12日はトーマスにやめろ!って言われた後に、ジョンメアちゃんトーマスの顔見ながらすすすっと一瞬離れて、またぎゅっとくっついて、ニヤニヤとトーマスを見つめるもんだから、トーマスご乱心。ジョンにボールぶつけてた。12日入る前からこのトーマス可愛いよアドリブコーナーのレポを見ていたから、やっと生で見れて嬉しかったし、想像以上にトーマスが可愛いでした。大千穐楽のアドリブは「よーしみんな無視しよう!」と、最後にして無視を決め込んだトーマス(笑)日生の時は客席で笑いが起きること少なかったのに、梅芸はアドリブが多いのと小瀧くん含めたキャストの方たちが気楽に笑って見てね、と発信してくれたのもあってかジョークシーンで結構笑いが起きてて楽しかったなあ。感情を共有している感じ。

「オドネルが女とサッカーについてなんて言ってるか知ってるだろ」のトーマスのセリフの後神父様の悪口を言い合うシーンになるんですけど、ここも日生で見た時にはなかったアドリブがありまして。メアリーが神父様を「神父は時代遅れのネアンデルタール人よ」と貶すセリフがあるんですけど「ネアンデルタール人」のところを変な声と変な動きで表してて、メアリーがおふざけ楽しんでる!可愛い!ってなった。この場面は18歳の少年少女たちが年相応に楽しくジョークを交えながら会話を楽しんでいる光景なので、この物語において数少ない癒しポイントでもあるんですよね。トーマスがクリスティンを口説いたり(本人は冗談だとシラを切りますが本気だったであろうトーマス報われなくて可愛い)、ジョンがジンジャーを揶揄するのをバーナデットが庇ったり、ペラペラ楽しそうに喋る(ダニエルを揶揄ってるだけだが)トーマスだったり。なのにプロテスタントの行進が近づいてくるのをきっかけに逃げるぞ!となってしまう彼ら。こちらも現実に引き戻される気分になる。バーナデットの「私にはわからない...イギリス軍は私たち(カトリック)のことを守ってくれるんでしょう...?」という問いにトーマスが「ああ、もちろん守ってくれるよバーナデット。でもおかしいよな。あいつらイギリス軍はプロテスタントの奴らと同じ色の旗を掲げてる」と答えるシーンがあるのだけど、これは血の日曜日事件を匂わせる会話なのか?と感じましたね。横暴な地域警察よりも信頼できるはずのイギリス軍は結局プロテスタントな訳で、ベルファスト北アイルランド)の殺人やテロ行為を鎮圧しに来たのではなく、カトリックを鎮圧しに来たのではないかと、トーマスのような賢い子はそう感じてしまう。賢いゆえの切なさがある。結局は宗教対立。イギリス軍がカトリックと友好的な関係を築くのはこの時代では難しいお話なのだなと。だけど大千穐楽のこのシーンは少し癒されるアドリブを見つけてしまって、一人でふふってなっておりました。「逃げるぞ!」となるジョンたちと「逃げることも動くことも拒否するの!」と立ち向かおうとするメアリー。「足を折られたら逃げることも動くことも出来なくなるぞ!」とトーマスはいうけど、メアリーは「腕を組むのよ!こうやって!」と、トーマスメアリージョンの並びでメアリーに無理やり腕を組まされるトーマスとジョン。初見の時点でこの三人だけでも可愛かったんですけど、この流れの時に三人の後ろを見てたら、メアリーに習ってバーナデットが一人ニコニコで両手を腰につけて前ならえの先頭の子(表し方)のポーズしてて、それを見たジンジャーもバーナデットに習って同じポーズ取ってて、なあああんんて可愛いの。ときゅんきゅんしておりました。しかもジンジャーは不思議そうな表情浮かべながらそれしてるのよ。そのポーズをずっとやってたら、メアリーに対して呆れモードなトーマスに見つかって「何してんだ、それやめろ」みたいな顔とジェスチャーされてジンジャー渋々やめる。みたいな後ろの子達がまるっと可愛かった。大千穐楽以外後ろの子達を見てなかったから正確にアドリブなのかはわからないけど、最後にかわいいもの見れた!ラッキー!な気持ちになりました。可愛いことしてた人たちの前では「ジョンなんとか言ってくれ」とトーマスがジョンに助けを求めて、ジョンがメアリーに言った「メアリー、君が残るなら俺も残らないといけない。わかるだろう?君を愛しているんだメアリー、俺は君を守りたい。君が正気を失ってしまったとしても」というあまりにも情熱的で、その後のバーナデットのセリフを借りますが、あまりにロマンチックな愛の言葉。メアリーと恋人になった後のジョンは恥ずかしいくらい真っ直ぐな男になるんですよね。告白する時に「お前を」と言っていたジョンが「君を」と二人称が変わっている所でもメアリーへの愛情が伝わる。こちらが恥ずかしくなってしまうようなロマンチックな言葉を、こんな緊迫した状況下でさらっとメアリーを正面から見据えて言えてしまうのがジョンの魅力の一つ。良くも悪くも真っ直ぐすぎるんですよ彼は。そんな言葉を真正面から受けたメアリーはさながら、愛してるって言われちゃった♡みたいなお顔をしてジョンに手を引かれはけて行くのですが、そのお顔があまりに愛らしいこと。余談ですが、みんながはけて行く時にさらっとバーナデットを待ってあげてるトーマスが男前すぎてキュンとする。バーナデットとトーマスの身長差可愛い。

 

【♪Pro's Own Country プロテスタントの国(群衆)】

オレンジオーダーのデモ行進のシーン。「神の国」と同じメロディなのですが、感じ方が全く違う曲になっているのがすごい。「神の国から出てゆけ」という整列した群衆からの力強い歌声と共に怒号のような「出ていけ!!」と叫ぶ声。今回舞台がベルファストカトリック側の思いばかりを受け取ってしまいがちだけど、それを阻止してくれるのがトーマス含めた悪ガキ三人衆のデルに対する態度と行為だったり、IRAの活動だったり、結局どちらも同じことをしてるんだよなあって、それこそが戦争で紛争なのだと感じる。

 

【♪The Crack(Part1) クラック(パート1)(クリスティン/デル)】

廃車から出てきたデルとクリスティン。デモ行進中に廃車の中で遭遇して営んじゃったけど、最高に興奮した!!な二人。この二人は最初から最後までフリーダムで好き。自由に楽しく生きていきたいクリスティンが、誰に対しても実直に接する、どこか一歩引きつつも穏やかなデルに惹かれているのと、自由に楽しく生きてきらきら輝いてるクリスティンにデルが惹かれているのが、とても良い。二部で大人になった二人は子どもを授かってアメリカへ行くのだけれど、その場面のデルが自由に活き活きとしながら生きているのが手に取るようにわかって、ああ、この子はきっとクリスティンと共に生きていることで18歳の頃の少し臆病にも見えたデルから自由に生きる楽しさを知ったデルに変われたのだと胸が熱くなりました。そんな意味でもこちらも非常に推せる二人。このシーンの二人はカトリックプロテスタントという壁を乗り越えて、よりお互いに惹かれ合っていく様が見えるのと、単純に楽しそうに自由に歌い踊る二人が見れるので好きです。二人のテーマは「自由」なのかなって思ってる。自由に楽しくきらきらして若い心のまま生きていく二人に思わず憧れちゃう。「クラック」はアイルランドで「楽しいひととき」「パーティ」みたいな意味で用いられている言葉らしいのですが、パワフルボイスのクリスティンにぴったりな曲でテンポも良くて大好き。「Are you ready for クラック!楽しいことしよう!」と頭の歌詞からパワフルボイス爆発なクリスティンがたまらなく好きなんですよね...彼女の歌声のために作られた曲なのではないかと思ってしまうくらいにぴったりだったなあ。「私についてこれるかな」「よし お前についていくよ クリスティン 人生長いパーティみたいなもんだ」「先に帰ったら許さないから!」という一連の歌詞から、これからずっとデルはクリスティンと二人で長いパーティを楽しむんだろうな〜と二人の未来に夢見ちゃう。この曲の時はダンスというより、曲に合わせてデルがクリスティンを抱き上げて廃車の上に乗せたり、肩車したりするんですけど、このシーンのクリスティン、スカートが信じられないほど短いから毎公演、き、際どい...となりながら見てた。楽しそうに歌いながら走ってはけていく二人でこのシーンは終了。

 

【♪The Final 決勝戦(ジョン/トーマス/オドネル神父/少年たち/少女たち/審判)】

ついに手に汗握る決勝戦。初見のこのシーンは大鳥肌だった。見てるこちらは完全に彼らの決勝戦の観客。後ろで応援してるメアリーたちも可愛いんですよねこのシーン。「頑張れー!」とか言いながらみんな応援してるから、気抜いたら私も「頑張れ!!!」と叫びそうになって危なかった(笑)

勝戦は実際にボールは使わずにエアボールなんですけど、彼らの動きが細やかでまるでそこに本当にボールがあるように見えるのがすごい。スローモーションで魅せる演出なのですが、それだけじゃなく全員が一時停止する演出もあって、こちらはどう試合が動いていくのかドキドキ。あと、複雑な体勢で一時停止しながら歌うからみんな声量と歌うまお化けだなって改めて思う。まず最初に点を決めたのは我らがジョン・ケリー。相手チームのデフェンスを華麗な動きで抜けていき、一度ジンジャーにパス!そこでスローモーションが一旦とけて、ジョン以外は一時停止の状態になり「華麗な動きだ、なんて素晴らしい、いうことなし、こんなの人間じゃありえない!一人で十分だ、もう一度ボール捌き見せよう、じっくり見てよスーローモーション!」とジョンが歌うのですが、自己評価が高くて高くてほんと可愛いな君は!!!ってなる。その後スローモーションで時間が巻き戻り、またジョンの華麗なボールさばきリプレイが始まります。ジョンによるジョンのためのリプレイ。可愛い。ボールを受け取ったジンジャーがジョンの指示通り彼にボールを戻してそのままゴール。「彼が決めた1:0だ!すごいシュート 惚れ惚れする彼は天才」の歌詞がふあーっと頭に流れる。ここの曲の盛り上がりがすごくてこちらの熱気も上がるんですよね。良い調子と思ってたらまさかの神父様からの悪魔の囁きが。「緊迫した展開だ リスク冒せ つま先にスライディング 構わない モタモタするな 一か八か こてんぱんにやれ 審判は見てない」と悪魔のプレーをトーマスに歌いかける。いやいやそれでええんか!?となりますが、きっと神父様も一生懸命なのだと心に落とし込む。審判が見てない瞬間にトーマスが相手チームの足を踏みつけるのですが、踏みつけた瞬間審判は確実に見ていたので「足は狙ってない、見てただろ あいつがわざとこけただけだ しぶとい奴だな」と低音トーマスボイスで歌いますが「驕るな勘違いするな、出してやろうレッドカード!」と審判は歌ってトーマスはレッドカード。相手チームのPKが決まってしまうのです。神父様のばかやろう〜〜!!と叫びたくなる。まあ、それを行動に移してしまうトーマスもトーマスなのですがね。1:1になったことで円陣組んで気合い入れ直し。さてどうなる!と高ぶる展開。試合後半、ジョンが担がれて、アクロバットシュート!「英雄のゴール決めろ!!」とみんなが歌った瞬間にゴールが決まるのです。なんという主人公。ニールとジンジャーに高く高く抱き上げられるのが毎公演可愛かった。カッコ良いよジョン。大千穐楽はそんなカッコ良かったジョンじゃなくて、下手のトーマスを観察していたのですが、ゴール決まった瞬間に神父様と抱き合ってぴょんぴょん二人で跳ねながら喜びを分かち合ってるのが可愛すぎました。トーマスと神父様やっぱりなんだかんだ可愛いのよ。そしてこのシーンラスト、トロフィーを渡されてビューティフル・ゲームが流れ出しみんな歌いながら優勝を喜び合う姿が刺さりまくる。「グリーンを背負って 戦え ゴールをゆらせ 我らこそが エメラルドチーム輝く勝利 我らの手に」この場面だけで一つの感動をもらえる。5日に入った時にはジョンたちが優勝した後の敵チームを観察していたのですが、全員全身全霊で悔しがっていたし、恨めしそうにジョンたちを見つめながら監督に背中を摩られて去っていく選手を見つけたりして。前述した舞台の良さはどこにフォーカスするかによってその場面の受け取り方が変わる、というのを改めて感じた日でした。

 

【♪The Party パーティ(ジョン/ダニエル/ジンジャー/トーマス/クリスティン/少年たち/少女たち)】

勝戦のシーンから捌けることなく、舞台上で「とことん飲もう酔い潰れよう限界まで酔っ払おうぜ」と歌いながら生着替えし出すジョントーマスジンジャーニール。ダニエルもいたような気がするけど正直このシーンは4公演全部生着替えジョンを双眼鏡で見る時間だったので覚えてない(笑)「飲もう」って単語が聞こえて来た瞬間、取材会でバド兄さんたちが一緒に歌いそうになる曲はこれか!ってなった曲。「俺ら最強!あいつらをぶちのめした」って歌う時にジョンとトーマスが悪い顔して親指を下に向けるジェスチャーしてて、青いなーいいなーって良くないハンドサインに微笑ましくなってた私。ユニフォームから私服仕様になった彼らの後ろで試合場からバーに様変わりしたセット。彼らがバーに溶け込むと曲調が変わってゆったりとしたリズムになるんですけど、吐くまで飲んで潰れて二日酔いも気にせず飲む、ってなかなかえげつない。それだけ優勝が嬉しかったんだね、うんうんうん。そして「光あれ〜〜」というセリフで神父様が登場してそのままスピーチが始まるんですけど、そこでのバックミュージックがクラックですでにワクワク。神父様のながーいスピーチを、クリスティンがバーのカウンターに立って「さいっっこに楽しいクラックにしようーーー!!!」と声を張り上げてテンションがぶち上がる。「Are you ready for クラック!(フォー!!)楽しもうよパーティ!(フォー!!)」と最高に盛り上がってるジョンたちが楽しそうに歓声?合いの手?入れてくる盛り上がり方がめちゃくちゃ好きだった。というかこのシーンがこのミュージカルで一番楽しそうな場面だなって思って見ていたので回を重ねるごとに曲と、合いの手というか足で音取るところを覚えてしまって、大千穐楽のパーティシーンが今まで見てきた中で彼らが一番楽しそうに踊って歌っていたものだから歌い出しそうになるわ手を叩きそうになるわと抑えるのが大変だったなぁ。本当に全員が全身全霊で楽しんでるのが手に取るようにわかったし、彼らもテンションが上がってるのか、途中でトーマスジョンジンジャーでぎゅっとくっついてサンドウィッチみたいになってあまりにもカワイイたまらん。でしたね。このシーンはダンスも好きだし、人も多いし、まじで毎公演「目が足りません!!!」状態になる。これは本当に全公演入ってても足りないくらいまであるよ。みんなで肩組んで「もう戻れない」で左右で揺れる振り付けがあるんですけど、5日はジョンがセンターで左右順番を一瞬間違えかけてたんですけど(その時点ですでに可愛い)、ちゃんとメアリーにつられて振り付け通りに戻ったのが可愛かった。

途中で歌が止まってダニエルが女の子に怪しい薬をふっかける描写が始まるんですけど、「ダニエル、車上荒らしからヤクの売人になったの〜?」とメアリー姉さんにツッコまれるダニエル。結局騙されててダニエルはぼったくられていたわけですが、このワンシーンで、『ダニエルは泥棒でヤクの売人』だということを改めてこちら側に落とし込んでいるのではないかと感じた私。先の展開に繋がるダニエルのイメージ。

話を戻して、このダニエルのシーンをやってる後ろでジョンがしゃけちゃん(役名がわからないごめんなさい)と楽しそうに話してるのを見たトーマス&ジンジャーが(またこの二人なのよ仲良し)「おいジョン浮気してんのか?」と言わんばかりの悪い顔でジョンにちょっかいかけてたのが面白かった。これだから目が足りない。そしてまた歌が始まり、ここから歌いながら男女のパートナー同士でペアダンスをするのですが、そのジョンメアがあまりに尊い...。顔を最大限に近づけて二人何よりも幸せそうに楽しそうに踊るの。色んな動きしてたけど記憶にあるのは距離がひたすらに近いということだけで、ジョンメアの可愛さに脳がショートしてた。あの可愛い可愛いペアダンスを言葉にできないのが勿体なさすぎる。余談ですが、この曲中ジョンと富田さん(こちらも役名不明)がめちゃめちゃに顔近づける瞬間があるのですが、というかあれはジョンからぐいっと近づきにいってたのですが、君たちがキスするのでは!?とこちらが気が気ではなかったです(余計なお世話)

そんなこんなでこの曲中ずーっとジョンメアを基本追っているので曲が終わった頃にはデルがセンターに来ててトーマス率いる悪ガキ三人が声荒げ始めるからびっくりしちゃう。びっくりしないように12日は初めてジョンメア追うのを我慢して(我慢しきれなかったのでデルが登場した瞬間は見逃した)トーマスを見てたんですけど、彼もめちゃくちゃ楽しそうにノリノリでお酒煽ってたのにデルを見つけた瞬間に酷く怖い顔をするんですよね。ああ、生きてる。と私はまたここで生を感じるんですが。「ここは自由の国よ。彼もいていいでしょう!?」「こんな奴私は怖くない」とトーマスに詰め寄るクリスティン、でもデルは「俺は怖い」と言って、結果二人は手を取り合ってバーから出ていってしまう。「クリスティン・ワーナー、お前、プロテスタントと付き合ってんのか?」と言ったトーマスの心情が私はすごく気になっていて。好きだった人に対する、呆れ、なのか、怒り、なのか。はたまたその一瞬で彼の恋心は消えてしまったのか。すごく気になる。プロテスタントを忌み嫌う彼のことだから、呆れと失望の気持ちが強かったんじゃないかと私は仮定したけれど、あの強い語気に 悲しさ が含まれていたら切ないなと。トーマスにもほんの少しの純真さはあると思っている私なのです。純真さがあったからこそ、身内をプロテスタントに傷つけられた、という理由で彼らを嫌悪しているんだと思うのですが、そんな心が彼の賢い頭のせいで、言い方は悪いが、黒く濁ってしまったのではないかと。賢いというのは時に寂しい。最近学んだ感情。

はい、話を戻します。苛立ったトーマスに神父様が「暴力では何も解決しない。お前にはそれを考える頭も心もある」と諭して、トーマスは「その通りだ神父様!!」と熱いハグを交わすのですが、すぐに神父様を突き飛ばして「クソでも喰らってろ!!!」と。「お前らの血管には冷たい水でも流れてんのか!?俺は熱い血がかよった奴らと飲みたいね」と言い放ち悪ガキ3人も出ていってしまう。ここでおもしろアドリブがあったのが12日。神父様のホールドが強すぎて全然突き飛ばせないトーマスが可愛かったです。「水だとクソガキが!!!」とすでにベロンベロンな神父様をジョンたちが介抱して酒を取り上げる辺りからまた平和なバックミュージックが流れ出してほんわかムードに様変わり。私は見てないんですが、アドリブで取り上げた酒を一気飲みするジョン、というのがあったらしく、見たかったなあ。

 

【♪Love in Peace 平和に愛を育もう(バーナデット/ジンジャー)】

ここから私の推しコンビ(もはや全コンビ推しですらあるが)バーナデットとジンジャーのターン。最強可愛い癒しの二人。若者たちに介抱されてる神父様、バーのカウンターでこちらに背中を向けて恋人同士という雰囲気を猛烈に醸し出しているジョンとメアリー、そしてその二人の隣で一緒に話を聞いてるニール、ダニエルと女の子たち、バーナデットとジンジャー、とどこの席に目を向けて良いのか目が迷子になる場面。初手はバーナデットとジンジャーには大変申し訳ないのですが、幸せそうな空気纏ってるジョンとメアリーを双眼鏡でロックオンしておりました。二人の空気感だけで、誰がどう見ても恋人同士に見えるのがすごい。こそこそ何話してたんだろう、全部盗み聞きさせてほしいくらい二人の会話を何一つ逃したくない。こちらに集中してると聞いてるつもりの二人の可愛い会話もぼやけてしまうんですよね。なのでしっかり聞き取れたのは余裕ができた二公演目から。二公演目は先の展開を知って、この二人の会話の大切さを身に沁みて感じていたので、一行たりとも聞き逃さない見逃さない!と強い気持ちで挑んだ。「私はあなたこそ今日の真のヒーローだと思う...!」「グレック・オショーネシー...」と一生懸命言葉を紡いで、ついに好きな彼の名を呼ぶバーナデットが可憐な少女で愛おしい。「グレゴリーって呼んじゃうかも...!」って、もうもうもう、可愛いの限界突破。そんなバーナデットに少し早口になるジンジャーも、意識してるんだなあ可愛いなあってなっちゃう。なんだこの二人。まるっと可愛すぎるて。そして「自動車整備士になるんだ!」と夢を語るジンジャーに、二回目以降は涙を滲ませずにはいられないよ。暴力はそこらじゅうにある、意識しないなんてできない、と静かに穏やかに平和を願うバーナデットと、紛争を全力で否定したりすることはないけれど、暴力について考えない方が良いと静かに穏やかに平和を望むジンジャー。二人とも平和に向かって大々的に何か行動するわけではなく、静かに平和を切に願っている穏やかな雰囲気がある。そんな二人だからこの曲がとても合うんだろうな、と感じました。「バーナデット僕と踊ってくれない...? 図々しいかな...」「そんなことないわ...!!一緒に踊りましょう...!」と始まる「平和に愛を育もう」。「想像してみて 平和な暮らしを」と歌うバーナデットの声色が優しくて柔らかいのに、その中になんだか力強さも感じて、歌声に心が満たされていく感覚。「苦しい日々に愛と平和を」と歌い出すジンジャーの声色を表す言葉はバーナデットとほぼ同じになってしまうんですよね。優しさ溢れる声色なのに力強い。「暴力のない世界 のどかに静かに 愛と平和育もう」「希望に溢れる 平穏なひととき 二人愛を育もう」といった感じで歌詞も二人にぴったりなんですよ。クリスティンとデルが「自由」ならば、バーナデットとジンジャーは「平穏」かな。変わったこともなくおだやかなこと。二人には平穏な日常で静かに愛を育んでいてほしいよ...。今世でこの願いが叶わぬのなら来世でも、空の上でも良いので、どこか、二人の世界で、二人が永遠に幸せでありますようにと祈る。悲しい結末を迎えてしまうこの二人には、重い重い気持ちを背負わずにはいられない。ちなみにこの曲もずっと頭の中でリピートされるくらい大好きなんです。天気の良い帰り道に頭の中で流したくなる。お願いですからCDを出していただきたい...(叶わぬ願い)この曲中はバーナデットとジンジャーを主として周りも男女ペアでダンスを踊るのですが、またこの二人のダンスが良いんですよねぇ。この二人の周りだけ時がゆっくり進んでいるかのように感じる。その後ろでさっきまでジョンメアちゃんの隣で話してたニールと富田さんも踊ってるんですよ。こちらもお似合い。初日(初日以外も所々)はバーナデットとジンジャーの歌声をバックミュージックにして(贅沢)、背中で演じるジョンメアちゃんを双眼でガン見していたんですけど、曲終わかけ辺りからバーナデットとジンジャーの良すぎる雰囲気を感じ取ったのか、チラチラ二人で覗き見してて可愛かったし、曲終わりバーナデットとジンジャーはキスをするのですが、その二人を見たジョンの目がまあるく大きく開かれてて、か!わ!い!い!でした。ジョンの後ろのテーブル席に座ってたダニエルに目配せして、バーナデットとジンジャーを指さして「キスしてる!」と言わんばかりにダニエルに訴えかけるジョンと、それを知って二人をガン見するダニエルも可愛いだった。キスおわり、はっと我に帰ったようなバーナデットが「ママが迎えに来てるから行かなきゃ...!」と照れ隠しするように早口になるけど、二人以外のジョンたち観客はあたたかーい視線を二人に送ってるあの空間が好きだった。「あ、じゃあ君にいつか、電話、してもいい...?」って聞くジンジャー...!この言葉の間の取り方が、彼もドキドキしてるんだなぁって胸がギュウっとなる素敵な演技。「もちろん!!!」「じゃあ、明日は?」「いいと思う!!!」の勢いでまたジンジャーにキスをするバーナデット。はああ、可愛い。ここ、ジョンたちがハッと息を呑むのがわかって可愛かったなあ。みんなに見られてるよバーナデット!(笑)「私いつもはこんなことしないから...!」なんて言いながら全力疾走ではけていくバーナデットは、一生ジンジャーに幸せにしてもらうんだよ!!!と叫びたくなるくらい可愛らしい少女だった。この後ジンジャーの顔見て瓶と瓶をコツンコツンと合わせたダニエルが祝福を送ってるかのようで、ほんとお調子者だしそれでいて良い奴...!となる演出で良質。「おやすみ友よ!みんな、気をつけて帰れよ!」とベロンベロンな神父様のお言葉でこの場面は終了。みんながはけていくんですが、ここでも恋人繋ぎしてるんるんで帰っていくジョンメアちゃんは誰がなんと言おうと最高にお似合いカップル。ただこの神父様の「気をつけて帰れよ!」があまりにフラグが立ちすぎてるんですよ。ここですでに嫌な予感しかしないんです。

 

【♪The Beautiful Game(Ginger&Daniel Entrance) ビューティフル・ゲーム(ジンジャーとダニエル登場)(ジンジャー/ダニエル)】

ベロベロなジンジャーとダニエルが「ビューティフル・ゲーム」を大声で歌いながら登場。場所の設定的に深夜の住宅街なのかなって想像してる。「お前は素敵な夢を見るんだろうなあ。可愛いバーナデットと!」って言うダニエルは羨望も含まれつつもなんだか嬉しそうだし、「そうだといいなあ、否定はしないよ!」と言うジンジャーも幸せそうで、こんなにも楽しそうなひと時なのに、この後のことを考えると非常に苦しい。

何だかんだ、色んな酒をごちゃごちゃにちゃんぽん(ジンジャーが言ったちゃんぽんって言い回しがなんだかお気に入り)して飲んだダニエルは嘔吐寸前。自分の家に入る直前も何かにぶつかって「ガッシャーン!」と音を立てるけど「大丈夫問題ない」ってまた顔出して、この「問題ない」の言い方が毎度ヘロヘロで可愛かった。ダニエルに問題ないことを確認したジンジャーは安心した顔してまた夜道を歩き出すけど、覆面の男たちが数人現れて不穏なBGMが流れ出す。「おやおや、IRAの坊や。こんな時間まで何して遊んでるんだ?」とジンジャーを取り囲む。初日は、あああ、、フラグが回収されてしまった、と頭を抱えた。「俺はIRAじゃない!なにも指示してない!!」と叫ぶジンジャーだけど、懇願虚しく連れ去れてしまうんですよね...。この時必死にもがいて逃げようとしてるジンジャーを見ているのがあまりに辛くて毎公演しんどかったなぁ。

 

【♪The Boys in the Photograph(Reprise) 写真の中の少年たち(リプライズ)(メアリ/ークリスティン/バーナデット)】

不穏BGMがプツッと途切れて明るくなった舞台上に現れたのはテーブルを囲って女子会中のメアリーバーナデットクリスティン。激重劇場からきゃぴきゃぴ劇場への変貌に流石に感情ジェットコースターだった。「ねえ、デルと消えた後なにがあったの? あなたのママは今朝私に『クリスティンに変わって』って電話してきたのよ!」とニヤニヤしながら問い詰めるメアリー姉さんから始まるシーン。そんなメアリーからの問い詰めに「デルの家...!!」って答えるクリスティン。その後「きゃーーっっ!!」って顔を覆って叫ぶ三人が女子会すぎて可愛い。「私の頭の回転が良くてよかった!『まだ寝てます』って答えといた!...寝てたのはほんとだもんね!!」って、メアリーちゃんの頭の回転フルスロットルで好き。その後デルの父親の話をしてクリスティンが「そんなことより、ビックニュースはあなた、バーナデット!!!」って話を切り替えた瞬間、ピャーって恥ずかしがって逃げようとするバーナデットに心掴まれる。逃げれるはずもなくクリスティンに捕まって、こっちこっちと手招きするメアリー、恥ずかしくてお顔をぷくっとしてるバーナデット、三人まるっと可愛いこと。三人きっちりお席に座り直してバーナデットの昨夜のお話に。「彼と、キス、してたでしょ!」ってニンマリ笑顔で言う時のメアリーが、バーナデットの両頬を両手でキュッとしてて、尊い〜〜!!!って毎公演なってた。「してない!!」なんて否定するバーナデットだけど、逃げられないですよバーナデット。「してた!みんな見てた!ダンスフロアの真ん中でキスしてた!」と詰めていくメアリー。流石に観念したバーナデットは「わかった...!確かに彼とキスした...!」って白状するんだけど、この後のセリフが一途に恋する乙女ですごく好きなの。「一年生の時、チョコレートバーをくれた時から彼とキスしたかったの....!!」って!もう、こちらが顔を覆いたくなるくらい甘酸っぱくて胸がキュウッとなる。「今日電話してくれるって!」と改めて喜ぶバーナデットだったけど、「あなたの家、電話ないでしょ?」とクリスティンが言ったら、「じゃあもしかして、今日、家に来る...?」ってなってまた「きゃーーっ!!」と沸く三人。乙女だなあ、可愛いなあ。先出ししてたけど、「これでみんなパートナーがいる!ショートパンツの男たちは最高!!」っていうメアリーのセリフがお気に入りです。その後「写真の中の少年たち」の曲が流れ出して、「好きになるなんて!」「まさかね!」「嫌いだったのに」って歌い出す三人。椅子に座ったまま歌ってるのにすごく綺麗に声が響いてて、改めて三人の歌唱力に脱帽。「みんな変わったのよ!」で髪の毛をサッとはらう仕草をするバーナデット。それに続いて「わーたしも!」でメアリーが同じように髪をはらって、「つーきあうなんてね!」でクリスティンも同じことするの!三人まるっと本当に可愛い愛おしい。恋する乙女たちって最高!!って私が叫びたくなっちゃう。「あの見窄らしい男が」「私の彼になるなんて!」の三人のハーモニーがすごく良い。特に「私の彼になるなんて!」が三人ともすごく楽しそうで活き活きとした表情を浮かべるから目が離せない。「私の人生この先、彼と」の歌詞の時は、各々大好きな彼のことを想いながら歌ってるんだろうなって浸りたいんだけれど、「彼...」とリピートに入る瞬間に家のドアが開いて、「メアリー...!」とジョンが痛々しい表情を浮かべながら入ってくるの。ジョンに続くダニエルとトーマスの表情で、ああ...と察してしまうよ...。「ジンジャーが死んだ」と言葉を落とすジョン。その時の声色は公演によって違いも出てただろうけど、私の記憶に残ってるのは掠れた涙声だったなぁ。この「ジンジャーが死んだ」という一つのセリフで、こちら側も時が止まる。動揺を隠せない三人と、ずっと苦しそうなジョンたち。カトリックを狙った無差別殺人で、IRAへの報復。ジンジャーがどんな状況でどんな状態で殺されて発見されたかを必死に説明してくれるジョンのセリフに入るんだけど、その声色がもう苦しそうで苦しそうで。手足を縛られて袋に詰められて丘で発見されたと説明するジョン。ジョンの声とその状況を脳裏で浮かべてしまうと涙が止まらなくなった。「ジンジャーが最後に警察になんて言ったかわかるか...?『決勝で勝ててよかった』って言ったんだ...!」もうね、こちらも苦しくて嗚咽抑えるのに必死だったよ初日。回を追うごとに冷静さは保てるようになったけど、最後まで泣かない公演はなかったなぁ。誰にフォーカスしててもこの場面は辛い。12日と13日はなんとなく比較したくてトーマスに途中途中フォーカスしていたんだけど、12日も13日も彼は泣いていて、初日と5日に入った時は怒りで震わせていた印象だったから、(初日に関してはジョンを見たいのと自分の感情に引っ張られすぎて気づかなかっただけかもしれないけど)12日13日で悲しみに声を震わせているトーマスを見て、より心がしんどくなった。「彼は私にキスをしてくれた。あれが、最初で最後のキス...?」っていうバーナデットのセリフが突き刺さりすぎる。

この場面、トーマスが「お前は来るよな」ってジョンに問いかけるセリフが合計三回ほどあって、ダニエルは一回目の問いで頷くんだけど、ジョンは頷かないまま、二回目の問いでジョンが答える前に神父様が現れる。「お前たちを慰めに来た」と神父様。「慰めて何になる!!」と声を荒げるトーマスだけど、「じゃあ話し合いでもいい!」と話しだす神父様。「少年が一人死んだ。もう殺し合いはたくさんだ」と。ここからトーマスが「それでいいのか?じゃあ何のためにあいつは死んだんだ!!」と言うんだけど、メアリーは「彼は何かのために死んだんじゃない!無駄死にしたのよ...!!」と嘆く。確かに自分にとって大切な人が意味もなく殺されてしまったら、その死に意味を探してしまうだろうなと、トーマスの気持ちは痛いほどわかるのだけれど、結局メアリーの無駄死にという言葉に相違ないんですよね。それがそこにある現実でしんどい。トーマスは「ジンジャーのためにすべきことをする。プロテスタントの奴らを蹴散らす」というけど、神父様が声を荒げて「誰がやったか知ってるのか!」と言う通り誰がやったかなんてわからないんですよね。ただジンジャーは夜の街を歩いていただけであって、そこに居合わせた頭のおかしい奴らに殺されてしまった。それだけ。ただそれだけだというのがきっとトーマスには受け止めきれない現実なんだと思う。「誰でもいい!!!」と怒号を響かせるトーマス。彼はこれをきっかけに歯車がずれていってしまうんですよね。「だめ!そんな奴らがジンジャーを!」とメアリーが言ったときにバーナデットが「グレゴリー。彼の名前は、グレゴリーだった」と呟くのが印象的。バーナデットは、トーマスやダニエルのように怒りに支配されているわけでもなく、メアリーや神父様のように現実を見据えて冷静に物事を捉えているわけでもなく、ただただジンジャーのことを想って心を震わせているんだろうな、と彼女の愛に泣かされてしまう場面。メアリーの、そんな奴らがジンジャーを、というのは本当に紛争の根本のような気がする。「お前たちは友ではなくて、憎しみを愛そうとしている」神父様の言葉ですが、この「憎しみを愛そうとしている」という所から、終盤トーマスが歌う歌詞の中で「戦争を愛してる」というのが一節あるのですが、繋がっているなあ、と。歯車が狂ってしまった彼の末路。このシーンの最後の最後、再び彼はジョンに問うんですよね。「お前は来るよな、ジョン...?」と。ここのトーマスの声がねえ、涙声で震えてて辛いんですよ...。祈るかのように問うの。そんなのずるいよ。今思い出しても泣きそう。ジョンとトーマスは幼馴染で、ジョンにとって一番古い友達がトーマスなんですけど、(トーマスにとってもそうだといいなと勝手に想像してる)彼らの進む道が綺麗に分かれてしまうこの場面。トーマスの問いの後、メアリーは真っ直ぐにジョンを見つめているんですよ。このシーンのジョンはほぼほぼ上手で一人涙を流していて、あまり会話に入ってこないのですが、というか入れないくらいジンジャーの死がショックだったんじゃないかと思うんですけど、それとは別に、ジンジャーの死に涙を流しながらも、変わってしまった幼馴染であるトーマスの言動にも苦しさを感じていたんじゃないかなと勝手に深読みしてます。序盤のトーマスがデルを罵倒するシーンも「やめろって」と、控えめながら注意していたし、バーでトーマスが声を荒げていた時も少し離れた所から悲しそうな表情を浮かべていたので、きっと彼はトーマスのそういう面はあまり好きじゃなかったんだと感じていて。でももしもジョンがメアリーに出会っていなければトーマスと同じ道を辿る世界線があったのかもしれないし、反対にジョンが戦争を愛してトーマスが想い人を愛す世界線もあったのかもしれない。あまりに正反対の道を辿っていく二人を思うと、ジョンもトーマスも想い人を愛す、二人は永遠に大親友、そんな世界線がどこかにあれ。なんて願ってしまうよ。「俺は、行かない」とメアリーの視線に気づくことなく、声を震わせながら答えるジョン。ジョンはメアリーという拠り所があったからこそ選んだ道だと思う。舌打ちして走り去るトーマスと、ジョンの前で一度足を止めるもトーマスの後を追うダニエル、で次の曲が流れ出すんですけど、この曲が「平和に愛を育もう(リプライズ)」なのが涙溢れてよくない。

 

【♪Let us Love in Peace Reprise(Reprise) 平和に愛を育もう(リプライズ)(バーナデット/クリイスティン/メアリー/ジョン/参列者たち)】

「暴力のない世界、のどかに静かに、若く自由に愛し合おう」の歌い出しが涙声に震えているバーナデットのソロで、歌詞が、ね、彼女の心の底からの祈りのように聞こえるんですよ。「彼は一度も暴力を振るったことなんてなかった。彼は愛を求めてた。私を、愛してくれていた」と一つ前の場面でのバーナデットのセリフなんですが、歌詞にリンクしていてより祈りのように感じる。

このシーンでテンションが上がるのは非常に不謹慎なのですが、この後の「一息つこう、今信じ合おう、自由な日々に感謝しよう」がジョン、メアリー、バーナデット、クリスティン四人のユニゾンなんですよ、、!!女の子組に混ざってる小瀧くんにふぁーーー...!!!となった瞬間でした。

四人のユニゾン途中からセットが変わっていって、「大人になろう、今こそ学ぼう、平和に愛を育もう」の歌詞からと喪服の参列者たちも歌いながら舞台上に現れる。センターに運ばれてくるジンジャーの棺にお花を置いていく参列者たち。江見さんのSNSから情報を得たのですが、ここのシーンの衣装は「突然の出来事なのでそれぞれ家にある物で着飾ってきている」というコンセプトらしく、どこまでも演出が細かくて好きです。だからメアリーの赤のカーディガンを始めとしたバーナデットクリスティンジョンは、はけて衣装が変わることなくそのままなのかなと想像。はける時間が演出上なかっただけなのかもしれませんんが(笑)

「彼は来週18になる年でした」と神父様の言葉で改めてハッとさせられますよね。彼らはまだ道半ばの子どもたちなのだと。

「跪き、祈ろう、平和な日常、悲しみは終わり、自由に愛し合おう」と歌詞もメロディもバーナデットとジンジャーが愛を育んだあのシーンと何も変わらず同じなのに全然違う曲に感じる。幸せ溢れる二人がこれからやってくる輝かしい未来に心を躍らせながら「自由に愛し合おう」と歌う「平和に愛を育もう」と、自由に愛し合う平和な日常を懇願するような寂寥感溢れる歌声たちの「平和に愛を育もう(リプライズ)」表現者たちの凄さも感じる悲しみのシーン。初見の時は重たすぎる荷物を背中に乗せられた気分だった。曲終わり、何かが迫ってくるようなトントン、トントン、トンと刻まれる音の中。棺に跪くバーナデットが瞳を閉じていて、彼女もジンジャーの元へ行ってしまうんじゃないかと思うほどの儚さがあった。儚さの中にある美しさ。ジョンはメアリーに支えられながら泣いていて、クリスティンの元にはデルがやってくる。なんだか私にはこの情景があまりにも残酷に見えてしまった。トーマスとダニエルもジョンたちとは反対側に現れるのですが、ジンジャーの棺がまるで境界線のようで見てて辛かったな。この何とも重たい気持ちを抱えたまま一部の幕が静かに降りていく。初日の休憩は呆然としちゃって動けなかった。

 

 

ACT2

「♪The Happiest Day of Our Lives 人生最高に幸せな日(ジョン/メアリー/参列者たち)」

休憩終了と二部開始を知らせてくれる音が挙式で聞く鐘の音。チャーンチャチャンっていう幸せな音楽が今でも頭の中で再生される。ただ一部の終わり方があまりに重すぎたから高低差に驚いたけど(笑)

鐘の音と共に幕が開いて下手からウェディング姿の麗しいメアリーの登場...!!ミディ丈くらいかな?のウェディングドレスで可愛い!!!!が爆発。「こーれでよかったのかな 誰かの妻になる 辛い日々の始まりか 幸せが待ってるのか」と歌うメアリーはなんだか不安げ。次上手から駆け出して来たのはタキシード姿のジョン!ジョンのタキシードに白と青のお花がついてたから、メアリーのブーケは白と青なのかなあ、なんて想像してる。ブーケトスのシーンは後にあるんだけど、何色のお花が入ってたのか流石に忘れちゃった。ジョンは慌ただしく現れたと思ったら、「15杯もビールを飲んで、中華食べて胸焼け こんな茶番の先に幸せが待ってるのか」と歌いながらニールにジャケットを着せてもらってて、新郎ジョン15杯のビールはハメ外しすぎているなと笑ってしまう。メアリーは若干マリッジ気味なの!ビール15杯と中華で胸焼けしてる場合ちゃうねん!(笑)まあ、そんなジョンが可愛くて好きなんですけどね。

そのまま二人はお互い歩み寄って、参列者の友人たちからの歓声に包まれ神父様の前へ。二人は愛を誓い合うんですよ。神父様からの有難いお言葉を聞いてるシーンで大千穐楽の時ニールを見てたら涙拭ってて非常にグッときましたね。鮫島さん(ニール)のSNS覗いてたら「いつも二人の結婚式のシーンは泣いちゃう」って呟いてたから見てたのですが、しっかり涙拭っていたので、ニールとジョンの仲の良さを更に実感できて嬉しかったなあ。

そういえばとんちゃん(トーマス)のMOREの記事を読むまで、このTBGは三年間の物語だとどこかで見て「え、そうなんだ...でも三年...んー...?」って疑問に思ってたから、五年経ってるってとんちゃんの話の流れで知ってやっとすっきりした。三年は流石に全てが早い。一部と二部の間で何年経過してるのかなぁ。一年とかかな。二年もありえるなあ、なんて考察するのも楽しい。答えがないって良い。とか言ってて今気づいたのですが、木下ちゃんのSNS投稿で、約三年間の物語って書いている...!どっちだ!?どっちが正解なんだ!?(笑)けど先述通り私は五年だと思いたい(笑)

 

「♪All The Love I Have すべての愛(ジョン/メアリー)」

神父様からの有難いお言葉をいただいた後二人の曲。この曲もめちゃくちゃ好きです...。「永遠の闇の中でも 永遠の愛を捧ぐ」と歌うメアリー。ツンデレだった少女は、このシーンで、というか、このシーンに至るまでの描かれはしなかったけど確かに積み重ねてきた時間の中で、最愛の人に真っ直ぐで純真な愛を誓う大人の女性になるんですよね。若々しくてきらきらした恋から、重みのある真っ直ぐな愛へ。この曲の中で何度も出てくる歌詞が「すべての愛をあなたに」なんですけど、この言葉がね、すごく、良い、んですよ。なんだろう、日本人だとあんまりしないような表現な気がしていてすごく好きなんですよね。このシーンは二人で歌いながら指輪の交換もしていて、推しの指輪交換...はわあ...。となりました。何度目の観劇でも。指輪を交換し合っている姿があまりにも絵になりすぎている。この曲はジョンソロの後の歌詞もすごく好きです。「この広い宇宙で(メアリー)」「燃える星の上(ジョン)」「この旅路は終わらない永遠に」「愛が私を満たす(メアリー)」「月と星が出会う(ジョン)」という流れなんですけど、なんたって私小瀧担なもので、月というものが大好きなんですよね、ロマンチックで。望という漢字に月が入っているので月を好きになったのですが。というのは置いといて、その後にこの流れがリピートされるんですけど、歌割りが変わるんですよ。「この広い宇宙で(ジョン)」「燃える星の上(メアリー)」「愛が俺を満たす(ジョン)」「月と星が出会う(メアリー)」になるのが更に好きです...!同じ気持ちだよ、私たちは。すべての愛をあなたに捧ぎます。という意味合いの歌割り変換リピートなのかなと勝手に解釈して

萌えてます。「新しい世界で すべての愛をあなたに」でお互い激近の距離で見つめあって(ジョンメアちゃんにとっては通常距離感)「すべての愛をあなたに」で誓いのキスをするんです。勝手に。めちゃくちゃ美しいシーンなんですけど、このキスはフライングキス。それが面白い。長いキスの後、神父様が咳払いして気まずそうに「それでは新郎新婦、誓いのキスを」って言うのがほんと好きだった。フライングしちゃったことに参列者の友人たちとジョンメアちゃんが笑い合ってるのがまるっと愛おしい。そのままバックミュージックが二部初手の鐘の明るい曲に変わり、セットも変わっていく中で、メアリーのブーケトス!ほんと、ブーケ何色のお花だったんだろう、思い出したい。ブーケを掴むのは富田さんで、あ、次の結婚はニールかな〜??なんて思いました。バーのシーンから富田さんとニールお似合いだったもの。そしてブーケトス終わり、大きなベッドに二人で座って、友人たちに運ばれるんですが、少しシュールで最初笑っちゃた。式からそのままベッドかい!みたいな(笑)この時、ニールたちはジョンに「頑張れ!」みたいなことしてて、メアリーも友人たちから応援されてたので、ここから初夜だな、と。友人たちに応援される二人が可愛い。そのまま友人たちははけていって、大きなベッドに腰掛ける二人。そのまま次の曲へ。

 

「♪Don't Like You(Reprise) 好きじゃない(リプライズ)(ジョン/メアリー)」

下手側にメアリー、上手側にジョン、二人の距離が近いので初日はここからずーっと双眼鏡で二人の世界を覗いていた私。アカペラで始まる好きじゃないのリプライズ。「すーきよ」とメアリー。「ベーつに 嫌いでは ない」とジョン。「まあ、他よりマシな方かな」とメアリー。この時の二人、一部の「好きじゃない」より優しい声で幸せそうに歌うから雰囲気変わって好き。「別に嫌いではない」と歌う時のジョンが、一部の、まあ別に嫌いではない...悪くないな。な照れ隠しっぽい感じから変わって、「好きじゃない」を歌って結ばれた学生だったあの頃を思い出しながら、あの時の俺たちこんな感じだったよな、というように楽しそうに少し揶揄うような表情と声色なのも良い。「まあ、他よりマシな方かな」のメアリーは笑いながら、肘で軽くジョンをこつくのが良いんですよね...!!こつかれたジョンが笑って楽しそうなのもまた良い。「言ってよ」「お前が」「好きっちゃ好きかも」「きっとなれるわ友達になら」「ただの友達?」「好きよ」「俺も」が一部の 好きじゃない なんですけど、リプライズは「言ってよ」「いや君が」「好きっちゃ好きかも」「これで幸せ あなたの妻に」「俺も幸せ」に変わるんですけど、まず何度も言いますがジョンからメアリーへの二人称が「君」になってるのが、ジョンのメアリーへの愛おしさが溢れ出ていてたまらないんですよ。「好きっちゃ好きかも」の歌声も、一部は「好き...っちゃ、好き、かも...!」みたいなツンデレメアリーたん爆裂で若々しくて可愛らしい少女っぽい歌声だったのが、「好き...っちゃ好きかも」と愛が溢れんばかりの優しい歌声になるんですよ。大人になったジョンメアちゃんをひしひしと感じる。このシーン二人とも、お互いがたまらなく愛おしい、という感情が目から漏れ出てるのよ。お互いを見る瞳が愛を訴えておりました。

さあ、ここから初夜ですよ!!という流れにぴったりな雰囲気だったのに、二人とも最強に緊張してるのかホテルの部屋の家具たちに興奮しだすジョン。このシーン毎公演ジョンが必死すぎて笑っちゃうのよ(笑)わんこみたいで可愛い。ジョン「良い棚だ!」メアリー「素敵!」緊張しすぎてて会話力0になってるのよ可愛いな。部屋にあるノベルティに「おいメアリー!俺たちクリスマスプレゼントをここで揃えられるぞ!!」と興奮するジョンも好きだし、「見ろよ!ケトルだ!!ベッドルームにケトル!すごくない!?」と声裏返るほどの声量で騒ぐジョン面白すぎる。見ろよ!ケトルだ!なんてセリフこの先聞くことないぞ。その後「紅茶飲む?」って聞くジョンに「明日の朝までとっておいた方が良いと思う」って真面目に返答するメアリーで二人とも固まる。意識してる証拠で大変可愛いです。気まずい空気と思ってたらまたジョンが「これは何?」と質問を飛ばすのだけど「ズボンプレッサーよ」「ズボンをプレスできるの!?じゃあ俺がズボンを脱いで」とズボンを脱ぎかけた瞬間メアリーが「きゃー!!」と悲鳴をあげる。ウブなメアリー。そんなメアリーの誤解を解こうと「ズボンをプレスできるなーって...」と弱々しく弁解するジョン。ここでジョンの大焦りタイムは終了。「...私あなたを待たせすぎた...?」とメアリー。「そんなことない!俺も地獄の業火に焼かれるのはごめんだ」と返すジョンだけど、正直ロッカールームであれだけやる気満々でメアリーにキスしてたジョンを見てたから、どっちが本音なのー!と困惑。まあこの後歌う曲の歌詞で本当はする気なかったのかなあとも最初思いつつ、けどあの頃の彼はまだ若かったし、今の彼の気持ちとその時の彼の気持ちは別物だろうから、周りもやってるしという気持ちであの頃はやる気満々だったんだろうな若いなジョン。という結論に勝手に至りました。

話の流れでメアリーがら「じゃあ、これが初めてじゃないってことにしましょう!あなたは私にうんざりしてて、むしろテレビをみたいと思っていて」とベッドに寝転んで仰向けになり低い声で「『あー、また夫が私にちょっかい出そうとしてる。共和国のことでも考えていよう』なんて思っているの!」とメアリーが起き上がった瞬間、ジョンは真剣な目でメアリーを見つめて「俺は君にうんざりしたりしないよ、メアリー」だなんて優しい声で言うんです...。なんですかこの愛に真っ直ぐな男は...!ジョンは冗談でも愛する人にうんざりなんて言葉を使いたくないんだなと、どこまでも純真で愛に真っ直ぐな男。このジョンのセリフ、1、2を争うくらい劇中で好きなセリフです。ジョンの人生の中の主役はメアリーなんだろうな、素敵。

カトリックなのが嫌...!世界中がバカみたいにセックスしてるのに私たちはパーティに呼ばれない...」と嘆くメアリーに「お袋はとっておくほど良いっていつも言ってた!そのほうが、やっとするときに良いって!」ってジョンが言った時さすがに吹き出しそうになった。おかんとどんな会話してるのよ(笑)ジョンがあまりに素直すぎる(笑)

 

「♪The First Time はじめて(ジョン/メアリー)」

この曲を歌いながらお互い少しずつ身につけてる服を脱ぎだすシーン。「なぜか二人恐れ合う 震えてる はじめて だから。罪じゃないのなら 抱きしめて。幸せな時を はじめてを 捧ぐ 夜」とメアリーパートから始まるのですが、抱きしめて のとこで語尾の音が上がるのでなんだか切なくも感じて、今すぐ私が抱きしめるよメアリー...!!という世界一余計なお世話な感情が爆発してしまう。この後しっかりジョンが抱きしめてくれるので私なんぞはお役御免なのですが。(それで良い)はじめてを捧ぐ夜と歌うので改めて思うのですが、ジョンメアちゃんお互いがはじめての相手っていうのがたまらないですよね。

この後のジョンのパートが、先述したあの頃本当はする気がなかったのかなと思った歌詞。「うまく できる 気がしない。何度も聞いた 苦い経験。何もできずすぐ終わり できるのか俺に はじめてを 捧ぐ 夜」彼も不安でいっぱいなんですよね実は。そんなジョンの心の中が透けて見えるこの歌詞のパートも好きです。このパート、しゃがんで靴下脱いだりする動きがあるのに、一切歌声ぶれずに低い音で歌うから、すごいな...。と毎公演感服してた。そんな小瀧くんの成長も垣間見れるシーン。そういえばこの間のWESTubeの体力測定回で小瀧くんが靴下を脱ぐシーンがありましたが、そこめちゃくちゃこのシーンと同じ脱ぎ方してて非常に滾りましたね。ジョンの靴下ぬぎぬぎの動きは小瀧望くん本来の脱ぎ方なのだと小さなことで萌えるオタク。

話を戻しまして、また少し怖がるメアリーパートから「怖気づかないで はじめてを 乗り越えよう」と二人で歌ってベッドの上に向かい合って座るのですが、ここからの間奏部分でお互いの服のボタンを外し合うんですよ...。萌が過多すぎて吐くかと思った。このシーンからまた二人の距離が近すぎるので私は安定の双眼鏡タイム。ジョンがまずメアリーのドレスの背中ボタンを外していた気がする...。ジョンの緊張が彼の少し震える指先から伝わってきて、こちらもしっかり煽られるように緊張した。その後交代して、メアリーがジョンのシャツのボタンを外してくれるのですが、外されている時のジョンが、まっすぐメアリーを見れないのか、目をキョロキョロさせながら天を仰いでいて可愛かったな。そこからは自分たちで脱いでいき、ジョンは青と白のストライプのトランクス一枚、メアリーは官能的でありながらも可愛らしいネグリジェの状態に。双眼鏡で覗いてて思ったのは、ジョンの下着ラルフローレンだよな...?と。下着の端にロゴがあったんですよ。欲しい。(いらんだろ)

そして再び話を戻します。お互い身を覆う布がほぼない中で見つめ合って、まずジョンが王子様のごとくメアリーのおでこに優しくキスを落とすんです。最初から唇にがっつくんじゃなくておでこにキスをする辺り、ジョンがはじめてを大事にしていることが伝わる...。尊い...。その後メアリーがジョンにキスするんですが、この時メアリーの両手はジョンの首をホールドしてて、ジョンはメアリーの腰を両手でホールド、お互いぎゅうっとなっててたまらん。非常にえっちで良い。三回目か大千穐楽で私が双眼鏡越しに見たのは、メアリーとジョンのおっぱいがピタッとくっつく瞬間で、さすがに萌えが許容オーバーしまくって「ヒィッッッ...!!!」って声が出そうになった。危ない。そのくらいぎゅっとくっついて数秒キスしたすぐ後に二人で「こんな気持ちははじめて 熱く 求めてる」なんて近距離で歌うのだからびっくりしちゃう。そしてこの後の歌詞と二人の振り付けがすごく好きなんですよ。「二人の愛 いつまでも」「君と共に」(ジョン)「二人」(メアリー)「 手を取り」で声を重ね、見つめ合ってた二人が前を見据えて、恋人つなぎをした手を前に出すんですよ。ここが本当に好き。二人の声が重なる「手を取り」で少し曲が盛り上がる感じも含めて好き。真っ直ぐ前を見据えて手をぎゅっと繋いでいる二人は、永遠の愛という言葉があまりに似合う。その後また二人は見つめ合うんですけど、その時の二人の目が最愛の人を見ている目でしかなくて、こちらにまで伝わるくらいの愛を感じる視線だったし、蕩けてしまうくらい優しく微笑み合うんですもん...。私が見てた彼らは、恋人同士、いや、完璧に夫婦だった。ちゃんと心の底から相手を愛しているんだろうなと感じる演技。熱い。「夜明けまでそばに はじめてを 捧ぐ 夜」「この星で 二人 だけ」で曲が終わって、二人はベッドに沈み込んでいくんですが、二人のベッドがある奥だけ照明が落ちて、手前の照明が明るくなり、クリスティンを筆頭にした陽気な友人たち(あの陽気な様子から見て、何次会かまでやった後なんだろうなと思う)が「パーティ」を歌いながら登場。この時もニールが富田さん抱えてはけていったりするからほんとにお似合いだなって思いながら見ておりました。わあーっと友人たちがはけて行った後、電話のベル音と共に奥の照明が明るくなって、ベッドから起き出すジョンとメアリー。電話に出るジョンが「おい、これは結婚初夜の悪戯か?」と笑って茶化してるのがまさにジョークって感じのノリで面白くて好きだった。まあ、電話の相手はトーマスで、メガネを忘れたから、国境の安全地帯まで送り届けて欲しい という連絡なのですが。電話越しのトーマスの声も聞いてみたかったな、なんて思ったりもした。悪戯じゃなくてマジだと気づいたジョンは「わかった...行く」と返答して電話を切るんですけど、ここのシーンは、おーい!ジョンのあほ!!!と叫びたくなるシーン。行くとトーマスに返したジョンはベッドの背にかけていたズボンを吐き出すが、当然メアリーは「ジョンどこへ行くの...?」と問う。「あいつは今逃亡中なんだ。国境まで送ってほしいって言ってる」そのジョンの言葉でメアリーもこちら側もトーマスがIRAに入ったことを知るんですよね。「とうとうIRAに入ったのね...!」と怒りを露わにするメアリー。「時間の問題だった」とジョンは答えるけど、やっぱり切ない。IRAに入らざるおえない道を選ぶことになってしまった彼の人生。ここでちょっと面白いメアリーのセリフがあって、私はジョークじみてて好きなんですけど「私だって、トーマス二十人分くらいこの国のことを考えてる!」ていうセリフがちょっと笑えて好きです。トーマス二十人いたら一人くらい幸せな人生を送って欲しいな...。「けど人を爆弾で吹き飛ばしたりなんかしない!」続くセリフでメアリーとトーマス、各々の正義の違いがしっかり見れますよね。「俺はIRAじゃないから声を荒げないで」というジョンだけど、メアリーのセリフでも出て来る通り、IRAじゃなくてもIRAの兵士をあちこちに送り届けたら同じことなんだよジョン...。それでも彼は嫌になるくらい真っ直ぐで優しすぎる男だから「トーマスは友達だ!俺の一番古い友達なんだ!俺が助けなきゃ!」と押し切るのよ。何度だっていうけど、ジョンは優しすぎるんだよなぁ。後々の展開を考えると、ここが彼の人生の分岐点の一つなんですよね。ジョンがIRAになったトーマスを見限っていたらまた未来は変わっていたけど、ここでトーマスを助けようとするのがジョン・ケリーなんだよな、とも思う。「大丈夫!すぐ戻る!お土産買ってこようか!?」とおちゃらけるジョンだけど、とてもそんな気持ちにはなれないメアリー。去り際ジョンが「戻ってきた時も、まだ結婚初夜だよな...?」と弱々しくメアリーに問い、そのまま飛び出して行っちゃう。結婚初夜を迎えて幸せいっぱいであったはずの時間にジョンは愛しき人をベッドに置き去りにして何をしてるんだ...あほ...!!と

やっぱり叫びたくなる。「そうよ、ジョン。私たちは結婚初夜」そうメアリーが一人呟いて「すべての愛を、あなた...」と静かに一節歌ってこのシーンは終了。私がメアリーを抱きしめに行きたい...!!!(二度目の余計なお世話)

 

「♪I'd Rather Die On My Feet 立ち向かって死ぬ(ジョン/トーマス)」

緊迫したBGMの中メガネなしトーマスが拳銃片手に必死に逃げてる戦場の場面。街が暴力と恐怖に震えてる。しかしながらやっぱりとんちゃん(トーマス)男前すぎて心臓バクバクしちゃうよ。逃げてるトーマスはメガネがなくてよく見えないからなのか、味方を敵と間違えて拳銃を構えるシーンなんかもあった。しばらくしたら下手から身を隠しながら周りを注意深く見てるジョンが現れて、「トーマス...!」と声をかける。「!ジョン!お前はきてくれると信じてた!!」と喜びを露わにするトーマスとは正反対に「もうこんなこと頼むな...!早く何をして欲しいか言って帰らせろ!!」と声を荒げるジョンなのですが、この時の「結婚初夜だぞ!?」のセリフの時にトーマスに向かって左手の薬指にあるきらりと光る指輪を見せつけるところが好きでしたね。小瀧くんの左手薬指指輪は滾ってしまうオタクなので。「ああ、わかってる」「けどこの戦いの方が大事だ」といった感じで返答するトーマスにさすがに怒りが湧く。わかってるんかい!?だったら呼ぶな!結婚式の方に来い!!と言いたくなってしまう。だけど「この戦いの方が大事」だと言う、これが彼の正義。彼が選びとってきた選択ゆえの運命。トーマスは続けて「メアリーは自由と正義を戦わずに欲しがる人間だ」と。それに対してジョンは「彼女は殺人が好きじゃないだけだ」と返す。次のトーマスのセリフがめちゃくちゃ記憶に残ってる。「自由のために戦うのは殺人じゃない。戦争だ」平和ボケしてる、なんて言われてる日本人にとっては、戦争=殺人というのは概念だと思うし(私もそうで、最初は同じなのでは?となった)、それは、自由のために戦う、なんていう感情が沸いてしまうような物騒な世界に生きていないものだから、そちら側の感情がわからないというのが大きな理由だと私は思うのですが、自身戦争についてこんなに深く考え込むことが今までの人生経験上なかったので、今回のTBGで、戦争に飲まれ、戦争を愛してしまった一人の男のことを分析して考えてやっとほんの少し理解できた気がする「自由のために戦うのは殺人じゃない。戦争だ」という彼の考え方。彼にとって、殺人は戦争の中のひとつの手段に過ぎず、殺人という言葉を使うまでもない。人は人でありつつも人ではない。戦争では人が死ぬ、それが当たり前だ、と。けれど完全に理解するのは難しいし、理解できる日が来るとはあまり思えない。そして理解できて肯定できてしまうような世界にはなってほしくないな、とも思う。だから私はこのままずっと戦争=殺人の概念のままでいい。このTBGは今の日常が当たり前ではないとも教えてくれるような舞台だなと感想を紡ぎながら改めて感じてる。

「戦争で人は死ぬ。もちろん俺だって死にたくはない。でもこれは確かだ」のセリフの後からトーマスソロから始まる曲が流れ出す。ここではじめてしっかりとんちゃんの歌声を聞くことになるんですけど、ドスの効いた深く渋みのある、それでいてよく響く高音も出てしまう、なんて人だと度肝を抜かれてしまった。心臓にまで響いてくる彼の歌声。さらに狡いのが、色気を感じる声質というね。狡い男、東啓介。「どうせ死ぬなら 立ち向かう」と歌う第一声が突き刺さって抜けない。その後のジョンの必死に止めようとする「やめとけ」の歌声が良い意味で軽くてですね。TBG観劇前にチラッと見たどなたかの感想ツイで、とんちゃんは力強いドスの効いた声で小瀧くんは良い意味で軽い歌声だった、というのがありまして、これかと合点がいった。今まで小瀧くんの歌声を軽い、だなんて感じたことがなかったけれど、とんちゃんと小瀧くんの歌声が交互に楽しめるこのシーンでは、軽い、という言葉に納得した。それはもちろん良い意味で、なんですけど。個人的には、重たい世界にいるトーマスと、まだ光の世界にいるジョンとの対比が歌声でもできているように感じて良いなと思いました。こじつけですけど。ちなみに、ジョンも闇の世界に足を踏み入れてしまうシーンが後に待っているのですが、そこからのジョンの歌声はトーンが低くて、心臓に響く深みが出ているなと思っていたので、こじつけながらも個人的に満足のいく解釈だと思ってます。

確か「この戦いに終止符打たれる時 生き残るのは銃を持つ 者たち」のトーマスパート辺りでジョンが銃を奪って「目を覚ませ 現実に向き合えよ」のジョンパートで、ジョンが客席に銃口向けてた(トーマスから銃を遠ざけているだけ)記憶。上手の五列目くらいに座ってジョンに銃口向けられたい人生だった。残念ながら一階席の日は三回中二回ががっつり下手でしたが。

「正義のため 人を殺すか 身勝手だ」のジョンパートから「我が祖国に我が命 捧げよう」のトーマスパートで歌は終わり。曲終わり後の緊迫感のあるBGM中のこのシーン、二人が揉み合いになりながらトーマスの銃を取り合いするものだから、初日はジョンがトーマスを誤って撃ち殺してしまうんじゃないかとヒヤヒヤしました。トーマスがジョンに馬乗りになってこう言うんですよね。「ジョン、お前のサッカー人生の幸せを祈る。いつかお前は統一アイルランドのためにプレーする。俺は信じてる」ジョンの目を真っ直ぐ見ながら必死に言葉を吐くトーマス。これは彼の本心だと、私がトーマスにあると信じている純真な心からきた言葉だと信じたい。この場を凌ぐためについた嘘なのか、本心なのか、それはもうトーマスにしかわからないことだけれど、彼の根本にある消えてない優しさを信じたいなって、そう思うシーン。優しすぎるジョンはこのトーマスの言葉に揺らがないはずもなく、諦めてトーマスを送り届けることにするんですよね。ラストシーンに関わることですが、このトーマスの言葉に「昔のトーマス」を感じいているんだろうなと。ジョンは「くそ、今回だけだからな」というような表情を浮かべて二人ではけていきこのシーンは終了。重たい。

 

「♪God's Own Country/The Boys in the Photograph 神の国/写真の中の少年たち(メアリー/クリスティン/デル)」

セットも変わり、舞台上に現れたのはメアリーとクリスティン、そしてクリスティンのベイビーちゃん。いつの間に!? これ何年経ったの!?とさすがに初見はびっくり。話の流れは、クリスティンとデルがこの街で過ごす最後の日らしく、アメリカへ旅立つとのこと。メアリーとクリスティンのお別れのシーン。バーナデットは...!?と私はなってしまって、彼女がいなかった理由も知りたいなあ。深く考察したかったけど、考察できるほどの情報量がなくてここは断念。「今日は私とデルがこのゴミ溜めで過ごす最後の日!」と愉快に言うクリスティンはこの街を「ゴミ溜め」と表すけれど、彼女にとってそれはジョークとほんの少しの本音が混じった表現だったのかなあと感じた。「私本当にこの街が好きだった」と言いながらしみじみとしていたし、たとえこのベルファストがゴミ溜めだったとしても、彼女にとっては胸を張って好きだと言える場所だったのだなと思うと胸が熱くなる。

その後クリスティンが「私はアメリカへ、あなたはイギリスへ!」と言い出すのでまたまたびっくりしちゃう。「ジョンはまだ選ばれてない!」と焦るメアリーちゃん。なんだなんだと思ってたけど、ジョンはプロのサッカー選手になるための選抜試験を控えているらしく、それに合格したらイギリスへ行くらしい。「私まだ信じられない。高校生の時、あなたは何にもなれない なんて言ったのに」と言うメアリー。「雑用はうんざり」で「プロになるって!?馬鹿馬鹿しいわ!スターになんかなれるはずない!」なんて歌ってたメアリーを思い返す場面。そこからクリスティンが「一部リーグの選手は〜ポンドも稼ぐって!」なんて言った後に「そうね、私たちにはもう少しお金が必要。だって、食べさせなきゃいけない人が増えるから...」とメアリー。クリスティンが「?」ってなった後、お腹をさする動きをするメアリーに、クリスティンが「嘘!?」と叫ぶのと同様こちらも叫びそうになった。まさかのベイビー!ジョンメアちゃんにもベイビーちゃんが舞い降りた!けど選抜試験を控えてるジョンには内緒らしい。メアリーの妊娠を知った時の素直なジョンの反応、見たかったなあ...この後のことを思うと非常にしんどい。

ここからはいよいよメアリーとクリスティンのお別れムード。話の流れで「アイルランド人で損をするのが唯一ここアイルランド」というクリスティンのセリフがあって、ここすごく覚えてるんですよね。アイルランド人はどこにでもいて、どこの世界でも好かれる、ここ、アイルランド以外では。一部でのデモに行こうとするメアリーをジョンが引き止める場面で言った「ここはゴミ溜めだ」「リバプールへ引っ越す!」なんていうセリフや、現に今アメリカへ旅立うとしているクリスティンとデル、イギリスへ行くかもしれないジョンとメアリー、それぞれが他国へ散り散りになっていく様を見ると、このセリフをより鮮明に感じる。

二人のお別れムードの中に、学生時代の友人であっただろう二人が「クリスティン・ワーナー」と声をかけてきて、「その雑種の小さな兵士は大きくなったらカトリックプロテスタント、どっちについて戦うのかしら?」と煽りを入れてくる。「この子は誰かのために戦ったりなんてしない。たとえ私に何かあっても」と言い切るクリスティンが何も変わってないクリスティンで、好きだ...ってなっちゃう。「たとえ私に何かあっても」がすごく良い。怒りで他人を傷つけてしまうような子には育てないという、このベルファストで生きてきてクリスティンが生身で感じた怒りや戦い、ジンジャーとトーマスのこと、それらの経験からきた固い決意を感じた。それでも尚クリスティンと赤ちゃんに酷い言葉を浴びせてくる二人にクリスティンは胸の中の赤ちゃんをメアリーに預け反撃。「あなたたちこそ性根の腐った売春婦じゃない!」から始まり大声で攻め立てると、そのまま黙ってはけていく二人。攻め立てるクリスティンの声に「いーぞー!もっと本当のことを言ってやれー!」とデルが登場。久しぶりのデル。私が「クラック」の場面で語った、デルが自由に活き活きとしながら生きているのが手に取るようにわかった、というのがこのシーン。本当にクリスティンとデルは歳を少し重ねたこの場面でも、学生だった頃と何も変わらず、自由に楽しくきらきらして若い心のまま生きていく二人、すぎて、ずっと二人はこのままなんだろうなと微笑ましくなると同時にずっと幸せでいてくれと願う。

「俺たちのコンテナを波止場まで送り届けてきたよ。俺たちの、と言っても、ガラクタの90%は彼女のだけど」と悪そうな顔してメアリーに言うデルに蹴りかパンチをかましてたクリスティンが楽しそうすぎて好き。ここでのメアリーも学生の頃と同じように楽しそうに笑う顔が最高に可愛らしい。

いよいよみんなここを去るんだという話の流れからデルがメアリーに「君はここを離れるのが心苦しいかな、この国をとても愛していたから」と言葉をかけるのが、どこまでも優しい男だなと思う。旅立つ前にメアリーが「最後にジョンにも会ってほしいの!彼、いつもあなたたちのことを聞いてくるから」と言うんだけど、デルが「俺はトーマス・マロイにサッカー場に近づくなと言われてる。その言いつけを破るのは危険だ」と。トーマスお前は本当に...と頭を抱えると同時にジョンがデルとクリスティンを気にかけていたという優しさにキュンとする。彼にとってデルは、プロテスタント、ではなくて、大切な友人、ですもんね。こんな荒れた世界を見ているとそれだけでなんだか温かい気持ちになってしまう。クリスティンも「私もそう思う!ここでお別れが一番良い!ジョンにとっても大切な時期だし、邪魔したくないの」と。そしてお別れの歌。三人で「さよなら 神の国 より良き場所を求めて」と歌い始める。「涙流す神の国 別れ告げ散り散りに 離れていても アイルランドこそ我が家」で終わるのですが、「離れていてもアイルランドこそ我が家」と歌うのが、この国をなんだかんだ愛している三人というのが良いなあと。歌い終わり、デルがベビちゃんを抱いて「そういえば煙草を買ってこないと。君たちにお別れを言う時間をあげよう」といい少し場を離れて親友だけのお別れの時間をくれるんですよね。この温もりある優しさが18歳から大人になったこの時まで変わらず彼にあって、クリスティンはそんな彼を愛していて共に旅立っていくのだなと思う。

そして何度このシーンを経験しても驚かされるのが、ここからの歌の切り替え。すぐに流れてる曲が「写真の中の少年たち」に切り替わって間髪入れずに「写真を送ってよ 絶対ね! あなたの赤ちゃん」とメアリーが歌い出すのが毎回すごいなあって思いながら見ておりました。

歌い終わり、「必ず会いにきてね!」「イギリスにもきてね!」と二人は両手を握り合ってお別れ。デルとクリスティンははけていき、メアリーも一度立ち止まりながらも何か決心したような表情でその場を去っていく。この時なんでメアリーは一度立ち止まるんだろうって考えたけど、やっぱり故郷を離れていく名残惜しさかな、と私は解釈しました。去っていく親友と過ごす最後の故郷の景色を見つめていたのかなあ。そして近い未来同じようにここを去る自分を想像したのかな。メアリーは本当にこの街を愛しているんだなと感じられる一つの演出。

 

「♪The Selection 選抜(ジョン/選手たち)」

三人がはけて暗転したところで、二部が始まった時と同じ音楽「人生最高に幸せな日」が流れ出す。明転して現れたのは青のユニフォームを着たジョンと数人の男性たち。ずっとジョンはエメラルドグリーンのユニフォームだったから最初見た時なんだか不思議な感じがした。そのジョンたちは走りながら床に手をついて何やら競争している様子。私はなんだかシャトルランみたいだなあって思って見てたけど(笑)ここは毎公演みんな本気で対決しているらしく、公演後田川くんのSNS覗いて、誰が一位だったか確認していたのがすでに懐かしい。田川くんのSNS見てたら、この時ジョンと対決してる田川くん演じる男性は、決勝戦で戦った時にもいたリアムという名の男性らしい。最初アンサンブルの別役だと思ってたから彼がジョンに対して目の敵のような視線を向けて走っていたのはただこの入団テストを勝ち抜きたいからなんだろうなという簡単な見方しかしてなかったけど、どっちもリアムだと思って見ると、彼がこの選抜シーンで毎度ジョンに負けじと必死で競争していた理由が、決勝戦で悔しい思いをさせられたから、と分かって良い。大千穐楽の結果はジョンが鼻差で勝ってたんだけど、私が見てた感じリアムが勝ったと思ってたからジョンが喜んでて「あれ?」ってなってたよ私は(笑)リアムも自分が勝ったと思ってたみたいで、他の選手に「え?俺だよね?違う?なんで??」みたいに確認して不機嫌そうに首傾げてたのが面白かった。やっぱり彼らは舞台上のベルファストで生きてる(n回目)

軽いシャトルランのような競争が終わった後、ジョンの歌が始まるんですが「おーれが一番のプレイヤー!どう見ても 他は雑魚!」と歌うのがなかなかにツボ。雑魚!の時に人を見下した表情していて更に良い味出てたよジョン。最近はしんどいことがあるのこの曲を頭の中で流して無敵モードに入る、なんてことして遊んでいます。

歌い終わり、後ろで見ていた大人になったダニエルが「ジョン!」と声をかける。そのジョン!の呼び方がこちらまで懐かしくなってしまう変わらない陽気なダニエルの声。その声に気づいたジョンがものすごく嬉しそうに「ダニエル!?」って叫んで彼の元に駆け寄っていくものだから友情に胸が熱くなっちゃう。大人になったダニエルは汚れたジャンパーじゃなくて、きっちりとしたジャケットを身につけていて時の流れを感じるとともに、お前は一体どこにいたんだと疑問も生まれる。しかも当時より身なりに羽ぶりの良さを感じる。「スカウトの奴らお前しか見てなかったぞ!他はぜーんぜん!」「当たり前だ!俺は合格する!それは分かってる!」なんてヨイショが上手なダニエルと自信満々でかわいいジョンのやり取りの後、お前にはこれからマネージャーが必要!とダニエルが俺をマネージャーにしないかとジョンに持ちかける。けれどジョンは「俺のブレーンはメアリーだ!彼女に聞いてくれ!」とメアリーの肩を抱くんだけど、この時のメアリーの表情がめちゃんこ可愛いんですよね。いやいつ何時も可愛いんですけど、私は彼のものって顔をしていてたまらん。結局ダニエルの誘いの首を縦に振ることなく意気揚々としたジョンが「憧れのエヴァートン 行くぜ なってやる 伝説の選手 この俺に チャンスをくれ!」と一節歌い出すんですけど、私が入ったどこかの公演でこの歌い出し一歩遅れてた回があって、「あ、可愛い」と人間小瀧望を感じた瞬間でした。

内容に話を戻して、この辺りが舞台上の空気が怪しくなってくるんですよね。二人の男が舞台上に現れて「ジョン・ケリーか?」と低いトーンで声をかけてくる。明らかに彼らはスカウトの人ではないのだけれど、ジョンは完全にスカウトの人だと勘違いしてハキハキと早口で、自己紹介と自分の得意な役職をセールス、ダニエルもおまけとばかりに「そして俺がマネージャーのダニエル・ギレンです!」と自己紹介。「こいつはマネージャーなんかじゃないです!」と二人でわちゃわちゃやってる中、明らかに異様な空気を感じ取ってるこちら側はヒヤヒヤする。すると嫌な予感的中。「私たちは警察です」と。その瞬間空気が固まるんですが、コソ泥でヤクの売人だったため警察に名を知られているであろうダニエルが「俺ダニエル・ギレンなんかじゃありません」と必死に焦りながら言い訳をしだすからそこが少し可愛くて空気が解ける。解けたとはいってもジョンたちはもちろん固まったまま。他の選手たちはスカウトの人たちに声をかけられて全員はけていってしまうし。そんな空気の中久しぶりのオドネル神父様が登場。何が起こったか知らない神父様はジョンにかけ寄り「ジョン、ジョン、お前はここまでくると信じていたよ、お前は前に進んでいる」と声をかけるが、刑事が「残念ながらそれはまたの機会になるでしょう」と遮ってくる。当然わけが分からない神父様は「またの機会?私の教え子がプロの選手になるのにまた機会?お前は誰だ?」と返答。「我々は警官です」と二度目の自己紹介。その後にジョンが犯した罪について話を始める。「ジョン・ケリーIRAのトーマス・マロイを幇助した罪でお前を逮捕する」と。思い出すだけで辛いので一旦可愛い話を挟むのですが、この重たい会話の後ろでダニエルのカバンをダニエルと刑事が引っ張り合いをする演出や、ダニエルがこの場から逃げ出そうとするのを阻止する刑事という演出があるんですけど、舞台後半になってくるとここもアドリブが増えてきて、全然カバンを離してくれない刑事(通常ならすぐ離してくれる)に「これ、離して...そろそろあっちに行かないと...」と弱々しく懇願するダニエルだったり(客席の笑いもバッチリとってた)、ダニエルがそろ〜と動こうとするとそれをすぐ察して逃さないようにする刑事だったり、3、4回目の観劇ではこのシーン本当にアドリブ多くて癒されてましたね。ダニエルが小動物すぎる。

辛いですが話を戻します。刑事からの「逮捕する」に動揺が走るジョンたち。流石のダニエルも動きが止まってしまうくらいの衝撃。「俺は何もしてません!!神に誓います!!」と叫ぶジョンに「落ち着け、何をしたんだジョン、ん?」と動揺しながらもジョンを救うべく問う神父様。「何もしてません!俺はただ!友達を助けただけです!!」と言うジョン。いやそうなんだよな、ジョンの感覚としては友達を助けただけなんだけど、そりゃ捕まっちゃうよな。一回目の観劇でもなんとなく予想していたし。何度も言いますがジョンは優しすぎるんですよね、良くも悪くも。完全に悪い方に優しさが走ってしまっているんですけど、友達を助けたいという一心でした彼の行動を咎めることもできないんだよなあ。彼にとってデルがプロテスタントではなく友人であったように、トーマスも彼にとってはIRAではなく友人なんですよね。刑事はジョンを連れて行こうとするけどジョンは「神父様助けてください!!」と叫ぶ。そんなジョンに「ジョン、なんてことを...お前は、人生を棒に振った...」と涙声で呟くだけの神父様。いやもっと何か助けて!?ジョンが助け求めてますよ!?と思ったけど、トーマス=悪で捉えているであろう神父様には、ジョンがトーマスを助ける気持ちが分からないんだろうなとも思う。「俺は何もしてない!トーマスは困ってたんだ!!」とその後も必死に抵抗を続けるジョン。「お願いです!!」と刑事を振り解いて「結婚したばかりなんです...妻がいるんです...!!」と苦しそうに叫ぶのが、記憶に残りすぎていて辛い。「ジョン、ジョン...!!!」と涙声を荒げるメアリー。それでも国家勢力に友情を主張して反抗できるはずもなく、無情にも連れて行かれてしまうジョン。「あの日は、結婚して最初の夜だったんです...!!ジョン...!!」と叫ぶメアリーに更に苦しくなる。「はじめて」の後半で彼の分岐点の一つだと綴ったのがここに繋がるわけなのですが、このセリフを聞いた後だけは流石にジョンに怒りが湧いちゃう。結婚初夜にこんな可愛らしい嫁をひとりぼっちにするから!あほジョン!更に畳み掛けるようにしんどいメアリーの「...私は...妊娠してるの...」というセリフ。こんなにも幸せな言葉があまりにも悲しい言葉に聞こえてしまう。それがまた悲しい。きっとこの世界中の誰よりもジョンが喜んでくれたであろう言葉が届かないのが辛い。その言葉を聞いたダニエルと神父様は、ハッとした表情を浮かべて、意識を失いかけるメアリーを急いで抱き止めるダニエル。で、この場面は終了。

 

「♪John in Prison 刑務所の中のジョン(ジョン)」

サッカー場の観客席のようなセットを一周ひっくり返す看守。観客席のセットの裏には収容された囚人たちが数人。ここでこの場所が刑務所の中だと知る。他の囚人たちから服?か何か衣類のようなものを投げつけられてそれを不服そうに集めていくジョン。この「刑務所の中のジョン」は「雑用はうんざり」と同じメロディ。「独房の中 ぶち込めばいい 閉じ込められても殴られても」「どれだけ俺を 苦しめたって 俺の意思は曲げられない」と歌うジョンは18歳だったあの頃のような軽やかさはなく、歌詞は前向きだけど少し苦しそうにもがくような歌声だったのが印象的。それでもまだちゃんと自我のあるジョンで安心する。「俺のこと 止めてみろ」と歌い終わるとスッと音楽が消え、不穏で静かな音が流れるだけの空間にジョンのほぼアカペラが始まる。「勇気を持て 自分を信じて進もう」低い音で深く沈むような歌声。音取るの難しいだろうなって音楽経験一切ない私でもわかるような歌。「俺の人生 愛する人のため生きる」と前を見据えて歌うジョンの覚悟。これまでずっと愛する人のために生きる人生だったジョン。この後の展開を思うと胸がギュッとなる。「負けてたまるか こんなとこで暗闇の中に飲まれない 俺の 未来」の歌詞で終わるのですが、この「俺の」で一気にキーが高くなるものだからあまりの歌唱力に「ヒィっ...」って怯えちゃったよ。小瀧望くんの努力恐るべし...。

歌い終わったジョンに近づいてくる囚人のボスのような男(鮫島さん)。本人曰く、ここでのボス囚人は囚人サメィらしい。可愛い(笑)もちろんアンサンブルの別役なので、ジョンとメアリーの結婚式で涙を流していたニールとは別人。このボスが「お前サッカー選手らしいな」と声をかけてくる。「ああそうだ。俺はエヴァートンの入団テストを受けるんだ」と答えるジョン。しかし他の囚人たちから、もうそれは無理だと嘲笑われるジョン。「俺はここを出ていく!」「俺は友達を助けただけだ。そいつはIRAのメンバーだった、それだけだ」と言うジョンだけど、当然囚人からは「ならお前もIRAだ」と言われてしまう。どうやらここはIRAの巣窟らしい。「今にわかるさ。考える時間は腐るほどある」「お前に友達なんかいない。今のお前の仲間は俺たちだけだ」「IRAの大学へようこそ」と言葉で追い詰められていくジョン。俺は友達を助けただけだ、と叫ぶこの時のジョンはまだ綺麗な濁っていない真っ直ぐな目をしている。

余談なのですが、このシーンでは上手下手にそれぞれ看守がおりまして、上手に看守長のようなベテランっぽい雰囲気のあるおじさん看守、下手には新人のような見るからにオドオドしていて弱々しい青年看守。4公演中2公演が下手だったので、このシーンずっとオドオドしてる青年看守が気になって気になって仕方なかったんですよね。

 

「♪Dead Zone デッド・ゾーン(囚人たち)」

ここから囚人たちの曲が始まる。「闇の中 孤独の中 己が頼りか」と歌い出す囚人たち。言い方は酷いが良い意味で鳥肌が立つような気色悪さを感じた。囚人たちは整列しながらまさに囚人というような揃った動きを見せる。「首吊るか?紐はある」という歌詞の時に、ジョンがまるで首を吊っているかのように見える振り付けになってて、鮫島さんの手をジョンが掴むことで、ジョンの体が持ち上がっていたらしく、この細かい表現の動きもとてつもなくハードで驚く。「頼りは 俺たちだけだ 逃げる術はないぞ ここで死ぬのが落ちだろう」と囚人たちが歌っている隣で、苦しそうに頭を抱えて己と戦うジョン。確実に追い詰められているのが目に見えてわかる。「悪魔には 敵わないさ」辺りから囚人たちが整列して踊り出していた記憶。違ったかな?「信じられるのは俺らだ 苦しい時は力になってやるよ」辺りでジョンがもがき苦しみながらも彼らから逃げようとするけど「手遅れ お前のさだめ」でボスに追い詰められていた気がする...。この辺り感情重すぎてあんまり記憶がない。「手遅れ お前のさだめ 憎しみを学べ 生きるため憎しみ合え」でセンターに連れてこられるジョン。そしてついに「自由を奪われ 戻れる湧き出る光も」でジョンが囚人たちと同じ振り付けで動き出す。ジョンが完全に悪に堕ちてしまった瞬間。内容を踏まえるとまた不謹慎なのですが、ここの振り付けかっこよくて、ジョンには堕ちるな堕ちるな、と願いつつも、振り付けが揃う瞬間を楽しみにしてしまう自分もいましたね。瞳孔が開ききったような目でありつつも、光が失われてしまったことがわかる目での演技に鳥肌が立つ。ジョンがセンターで踊り続ける中曲は続くのですが、そこからの歌詞も重たいこと重たいこと。「ここに立ち入れば 終わり 憎しみの始まりさ」「全てを失う哀れな男 その怒りを忘れるな」「いつの日か復讐果たせ 目にものを見せてやれ」と、まるで悪に立ち入ってしまったジョンへの呪いの言葉のようで。憎しみ、怒り、復讐。そんな言葉たちはジョンには似合わないのに。ジョンが堕ちてしまうまでの歌詞もジョンを引きずり込んでいく悪魔の囁きのようで、確かにこんな言葉たちを毎日毎日掛けられ続けていたであろう描かれなかった部分を想像すると、堕ちてしまうのも時間の問題だったんだろうなとも思う。

歌い終わり、ぱつんっと音が切れて次の場面へ。ジョンと青年看守が観客側、格子のような隔たりが一枚降りてきてその向こう側にお腹が大きくなったメアリーが椅子に座ってるその状態から会話が始まる。ここでまず気になったのが、「刑務所のジョン」の最後余談で綴ったオドオドした青年看守。このシーンになって現れた青年看守にオドオド弱々しい、なんて要素を一ミリも感じず、むしろどこか狂ったような面持ち。描かれてない期間で君に一体何があったんや...とずっと気になってる。そしてメアリーのお腹の大きさと青年看守の変貌っぷりを見て、かなり時間が経過したんだろうなと感じた。

まずメアリーが「もういつ生まれるかおかしくないの」と声をかけるんだけど、この感じどう考えてもジョンは妊娠を知っているはず。いつどこで知ったのかそれもすごく気になるんですよね。きっとこれが初めての面会ではない、んだろうけど(恐らく)、悪にのまれて別人のように変わってしまったジョンが妊娠を知った時にどんな反応をしたのか気になって仕方がない。この後のジョンの酷い返答を考えると、メアリーが傷ついてしまうような言葉を返したのかもしれない、なんて思って苦しくてたまらない。「いつ生まれてもおかしくない」なんていう喜ばしいはずの言葉にジョンはぴくりとも動くことなく、どこか遠くを見つめているだけ。こんな状態のジョンを見てるだけで最初は涙が溢れそうになった。そんなジョンに続けて言葉を投げかけるメアリー。「ねえ!私のおっぱい!サッカーボールみたいなの!」と言うメアリーに、少しだけ視線を向けるジョンにちょっと笑いそうになった。こんな状況でもおっぱいは気になるんかい(笑)それでも少し視線を向けただけでまた無言の時間に。するとジョンがポツリと呟く。「そいつを哀れに思う。可哀想なチビだ」と。もちろん理解のできないジョンの発言にメアリーは「...どういう意味?」と問う。ここのジョンの声色がね、「立ち向かって死ぬ」で綴ったように、重たい世界にいるトーマスと同じような、心臓に響くような低音で重いんですよね。もう光の世界にいたジョンではないと、声色からもわかってしまう。「言葉の通り、可哀想なチビだ。憎むために生まれる」なんてあまりに酷いことを言うジョン。憎むために生まれる、だなんて完全に囚人たちに思想を捻じ曲げられているなと。「そんなこと言わないで!!」「この子は愛のもとに生まれてくるの。私たちの愛を受け継ぐの」と、愛する人が変わってしまっても、ただ変わらず彼女は彼に語りかける。「俺のお袋と親父も愛し合ってた!でもその二人から生まれた俺は結局ここにいる!」と言うジョン。ジョンも愛のもとに生まれて、愛する人のために生きていたはずなのに。君は分岐点で大きな過ちを犯しているんだよジョン...けどそれも友達を愛するがゆえの、君の嫌になるくらいの優しさの結果なんだと思うとやっぱり責めきれない。と思っていたらメアリーが「それはあなたが結婚初夜にどこかのチンピラを追いかけて行ったからこうなったのよ!」と核心をついてくる。どこかのチンピラ、完全にブチギレてるメアリー。メアリーにとってはもうトーマスは友人なんかではないもんな。彼女の正義は人を殺したりしない。それでも何度も聞いた「トーマスは友達だ!」を繰り返すジョン。「じゃあ彼は今どこにいる!?刑務所?捕まった?一度でも面会に来たことある?...ないでしょ?あなたの友達のトーマスは賢いからここにはこない!」このメアリーのセリフ、畳み掛けるこの感じ、めちゃくちゃ記憶に残っているんですよね。彼は賢い。賢さは時に寂しい。友情すらも踏み躙る彼の賢い頭と、そうならざるえなかったこの環境、世界。「いつまでもこんなんじゃない、いつか平和な時がくる」と懇願するように言うメアリーと、それに対して「平和な時なんかこない、俺たちは戦争中なんだ何百年も!」と平和を願うことすらしなくなったジョン。愛を語り合っていた二人の会話が、こんなにも悲しい会話に変わってしまっているこの状況で流れるBGMが「好きじゃない」なのが更に心を突き刺してくる。そして私がこのミュージカルの中でいっっっっっっちばん好きで、いっっっっっっちばん苦しめられて、いっっっっっっっっちばん狂わされたシーンがこの後なんです。「またくるから」とこの場を離れようとするメアリー。そんなメアリーを再び冷たい言葉であしらったかと思うと、BGMが途切れ静かな空間に。静寂の中に響くジョンの、嫌になるくらい優しくて、愛に、愛する人のために生きてきたジョンの、酷く優しい涙声。「...メアリー...!」「ごめんよ...」「どうか...」「ゆる...して...」涙声で掠れたジョンの優しい声。「好きじゃない」のメロディに合わせて紡ぐ言葉。ここに関しては小瀧くんが何度も指導されたという、歌を歌として歌うのではなくセリフのように歌う、が完璧に具現化できていたなと素人ながらに思います...。もちろん他も完璧なのですが、ずば抜けて、というお話。今「ごめんよ」の声を思い出すだけで涙が出てきてしまうくらい、あまりに苦しくて囚われているシーン。ああ。まだメアリーが、みんなが、愛するジョンがちゃんといるんだ、と心底安心してしまう。双眼鏡でしっかりジョンのお顔を見るとボロボロ泣いていて、メアリーもそんなジョンを見て顔を歪ませて。BGMが一気に盛り上がり、ジョンとメアリーが格子越しに手と手を取り合うその瞬間。あの弱々しかった青年看守が「手を離せ」と二人を引き裂く。そのまままた離れ離れになってしまうジョンとメアリーでこのシーンは終了。あーー何度思い返してもこのシーンはダメなんですよ。涙腺がバカになっちゃう。こんなに泣かされたセリフは初めてでした。

 

「♪If This is What We're Fighting For こんなことのために戦うなら(メアリー)」

そろそろ終盤に差し掛かる。赤ちゃんの鳴き声から始まるこのシーン。場所はおそらくメアリーの家で、メアリーとベビちゃん、そしてバーナデットと神父様の四人が椅子に座って会話している場面。久しぶりのバーナデットに沸かずにはいられない。相変わらず可愛らしい子。バーナデットと神父様はメアリーを心配して家に来てくれてるような感じ。バーナデットが「メアリー!元気そうね!顔色が良い!」と無理やり上げたようなテンション感で話しかける。そんなバーナデットに対して「バーナデット!嘘が下手」とニンマリ作り笑いなメアリー。そりゃそう、元気ではないですよね。「お金がなくて、夫が投獄されて、乳首が半分噛みちぎられて、痔であること以外は」元気なはずがない。乳首が半分噛みちぎられて、のセリフの時に痛そうな顔をするバーナデットと神父様が可愛くて好きポイント。この後の神父様の「それに効く薬なら持ってる。もちろん痔の方だ。誰も私の乳首には噛み付かない」のとこで笑いが薄い会場に笑いそうになったよ私は。絶対ここお笑いおふざけポイントなのに(笑)神父様はメアリーに、ジョンが〜に(四回入ってもよくわからんかった)出席できるように申請しといたからと言い残し、ベビちゃんを見てからこの家を出ようとする。今更ですが神父様って何者なんでしょうかね。神父様という呼び名自体、カトリック教会の職名であり、信者の信仰活動に奉仕する者のことを指すそうです。ジョンたちが学生の頃に入ってたサッカークラブのコーチで、彼らから神父様と呼ばれているという情報しかないため、ここから先の話は憶測に過ぎないのですが、サッカークラブで同じだったメンバーは必ずしも皆同じ学校というわけではなく、放課後またはお休みの日に出向くサッカークラブの仲間で、そのサッカークラブのコーチをしていたのがオドネル神父であり、信仰活動の一環で行なっているわけではないため、プロテスタント(本人曰く無神論者)のデルもこのサッカークラブに入れたのではないかな、と。皆同じ学校とはなんだか考えにくいしなあ、信仰活動としてサッカークラブをやっているならデルは入れなさそうだし、こんな感じの憶測を立ててみました。見えない部分を深く考えるのは楽しい。

話を内容に戻します。神父様が家を出て行こうとした瞬間に、この家に入ってこようとしたダニエルとぶつかりそうになる。「っあ!神父様!ちょうどよかった!懺悔しようと思っていたんです!」と咄嗟にちょけるダニエル。そんなダニエルに一言。「懺悔をするなら事前に言っておいてくれ。お前の懺悔を聞くには1週間はかかる」これちょっと笑った。神父様もダニエルがコソ泥野郎ってことには最初から気づいているのでこの言い草。そしてそのまま家を出ていく神父様。ダニエルは何事もなかったかのように気を取り直して、「メアリー!久しぶり!この子がジョンの子かい!?」と言ってベビちゃん(ショーンパトリック・オケイシー・ケリー みたいな名だった気がする)を見ようとする。メアリーはここでふざけて「違うわ。〜国の子よ!王女に預かってって頼まれたの!...ってばか!そうよ、この子よ」と謎のノリツッコミ。「ってばか!」の言い方が可愛いのでなんでも許されますが。ベビちゃんの顔を見たダニエルは「うーん、本当に美しい...。...正直に言うと、老人の睾丸みたいだ...」と空気を凍らせてくる。いやこれはこれでダニエルの正直さが出ていて愛くるしくはあるけど。流石に笑いかけるシーン。そんなダニエルにバーナデットは「彼の言うことを聞いてはダメよ〜ショーンパトリック・オケイシー・ケリー!あなたは本当に美しい!」とベビちゃんを抱き抱える。そして何かに気づいたバーナデットは鼻をクンクンさせて「上でオムツ変えてくる」と言いこの場を去っていく。ここのシーンなあ、バーナデットが母親になる想像をして勝手に悲しくなっていたのでよく覚えてる。これはこの舞台の登場人物全員に言えることなんだけど、各々の視点で描かれる物語を一つ一つ見ていきたいと思ってしまうよ。バーナデット、あれからどうしてたんだろうとか、ベビちゃんへの接し方とかを見てメアリーのうちにはよく来ているのかなとか。気になることばかり...。バーナデットがはけていき、舞台上にはメアリーとダニエルだけ。ここからダニエルは真剣モード。ちょけた口調ではなく、真剣な声色と表情でメアリーに話しかける。今君は苦しいだろうから、友達として、あくまでも友達として、これを受け取ってほしい、と差し出したのは分厚い封筒。ダニエルの口調と話の流れからお金だなと察する。めちゃくちゃに申し訳ないけど初手観劇の時は普通に「なんで?」ってなってしまったし、もしかしてダニエルはメアリーのことが好きなのではないとすら思ったシーン。もちろんメアリーは「そんなの受け取れない」と受け取りは拒否。そりゃそうだ。メアリーの性格で受け取るはずがない。「必要ないの。ジョンはすぐに帰ってくる」と。変わってしまった彼に直面しても真摯にジョンを信じ続けるメアリーにまた強さを感じてうるっと来る。「奴らは何年でもジョンを捕まえておける」そう冷静に呟くダニエル。観劇している時は気付かなかったけど、パブサで彼の人生を少し知れた(裏設定)今改めて思い返すと、「捕まえておける」はやけに明確さを帯びた言い方だなと思う。そんなダニエルにも「大丈夫!」と笑顔で返すメアリー。そんなメアリーに負けたダニエルはいつものちょけた口調に戻り「...そうだな!君の言う通りだ!ジョンはすぐに帰ってくる!まだ彼にマネージャーが必要だってこと忘れないで!」と笑顔で返す。その笑顔が、すぐ後の展開を思うと辛い。こんな和やかムードの中、突然響き渡る怒号。そして無理やり入り込んでくる覆面の男が三人。一人明らかに身分を隠しきれてない奴が一人いますが。当然メアリーは「出ていって!」と反抗。正体バレバレな覆面男が「君に用はない。あんたの夫は英雄だ」と。「私の夫はあなたに巻き込まれた馬鹿よ!そんなふざけた覆面は外してトーマス・マロイ!」そうです彼はトーマスです。そしてジョンは優しすぎる馬鹿。「俺は顔を隠さない」と言い覆面を外すトーマス。ああ思い出しただけで顔が良い(ちょろい)。ちなみにメアリーがトーマスだってわかったのは、下にメガネをかけているから、という理由なのですが、しっかり下にメガネかけて覆面被る男トーマスちょっとおもろい。しかもずば抜けてでかいし(190cm)良い声すぎるので即バレ。そしてメアリーに用はないというトーマスが誰に用があるかというと、ダニエルでありまして。いやなんでここにダニエルいるのわかったの?つけてたの?と思ったのですがこれもまたダニエルとトーマスの裏話に関わってくるところ。トーマスはダニエルをろくでなし、反逆罪で処刑すると言うが、言われた当人には心当たりがないようで「俺?なんで?」状態。トーマスは言う。「あの晩(ジョンメアちゃんの初夜)ジョン・ケリーが俺を助けたことを知っていたのはお前だけだ。ダニエル・ギレン、お前がジョン・ケリーを密告した」と。ここ、トーマスがまるで皆を他人かのようにフルネームで呼ぶので苦しさが増す。私たちが見ていた彼らの青春時代が幻だったんじゃないかって。「俺は何もしてない!!なんで俺がそんなことを!」と叫ぶダニエルにトーマスは「お前が泥棒でヤクの売人だからだ。警察はお前に取引を持ちかけた」と。ここで「パーティ」のシーンで私が綴った『先の展開に繋がるダニエルのイメージ』に繋がってくる。ここで更に思い当たるのがメアリーに渡していたお金。メアリーは「...だから私にお金を渡そうとしたの...?」とダニエルへ疑いの視線を送りながら後ずさる。「嘘だメアリー、こいつは嘘をついてる」と言うダニエルの動揺っぷりも相まって、彼にはそういう一面があるという固定的観念からトーマスの言葉に騙されかける。初手観劇では完全に騙されていた私。観劇した後だとダニエルには可愛さと優しさしか感じないから初手観劇の感情の起伏は貴重だなと思う。「お前の膝を撃つ」そうトーマスが言った瞬間、黙ったままの残り二人の覆面がダニエルを押さえつけて、椅子に無理やり座らせる。もがきあがくダニエルだけど力では敵わない。今にも撃ち込みそうになった瞬間は私も流石にドキドキした。なのに突然トーマスが「庭でやれ!!」と命じ、そのまま連れていかれしまうダニエル。メアリーが目の前で行われかけた行為に愕然とし上手く言葉が出ない中でトーマスが庭でと命じたのを見ると、彼に残ったほんの少しの良心なのかなと想像してまた悲しくなる。少し遠くから聞こえるダニエルの「やめろ」と叫びながら懇願する声。その声を聞いてられないメアリーも「やめて!トーマス!あなたはずっとダニエルと知り合いで...!」と泣き叫ぶ中で聞こえた一発目の銃声音、そして叫び苦しむダニエルの声。メアリーは声を荒げるが虚しくもすぐさま聞こえた二発目の銃声。ダニエルの声は聞こえなくなる。ここ、二発目の銃声音の後に謎の効果音が流れて、新喜劇のオチで流れるような(あんなにポップではないけど)効果音だったから、初手観劇の時ダニエルそのまま殺されてしまったんじゃないかと勘違いした。そのまま泣き崩れるメアリー。そしてこの後のトーマスのセリフ、特別なセリフではないんだけどすごく記憶に残っていて、「メアリー、これは戦争だ」と先ほどまでの刺々しい声色と変わり、丸みを帯びたトーマスの声色で学生時代と同じ呼び方をするんですよね。大人になったトーマスはメアリーのことを「ケリー夫人」とまるで当てつけかのようにそう呼ぶので(彼なりの距離の取り方なのかなと思ってる)突然優しい声で「メアリー」なんて呼ばれるとこちらの心臓がもたない。しかしながらなぜここでほんの少しあの頃に戻ったかのような言葉をメアリーにかけるのかはわからないんですよね。泣き崩れるメアリーに情がわいたのかな、良心の呵責があったのかもしれない。トーマス、お前は本当に人間味溢れていてとことん憎みきれない。ここからメアリーがアカペラで「こんなことのために戦うなら」を歌い始める。これは、メアリーの正義の歌。「こんなことのためなら こんなやり方なら 罪なき人が 死んでいくなら こんな戦いなら 勝たなくていい」そう歌うメアリーの歌声は震えていて、毎公演魂を震わせて歌っていたメアリー。何回目の観劇でも、木下ちゃんの震えつつも力強い歌声だけに支配されたこの空間があまりに贅沢で目を奪われない公演はなかった。このシーン、木下ちゃんの独擅場でこちらの魂も震える。吸引力が凄すぎる。これがミュージカル界のトップ女優、木下晴香か、と。

一節メアリーが歌った後、トーマスが最後に「ケリー夫人」と捨て台詞を残して家を出ていくんですよね。ここでまたその呼び方をして距離を取るトーマス。この二人のシーンを見ると、「神の国」の後のわちゃわちゃシーン思い出して切なくなる。相反する正義。「何故なの 殺しは 罪ではないの それがあなたの 正義なの」と涙を流し喉を引きつらせながら懸命に歌うメアリーに心を奪われる。途中から音楽流れ始めるけど、この曲ほぼアカペラなの技量が尋常じゃない。どの公演でも歌い終えた木下ちゃんに自然と拍手が湧き上がったなあ。この曲の「悲しみ苦しみ 信念を失い 気づけば傍には 誰もいない 無駄に憎しみ そのためだけに 続けてる 殺し合いを」という歌詞がトーマスの人生の最後そのままだなと感じた。

 

「♪All The Love I Have(Reprise) すべての愛(リプライズ)(ジョン/メアリー)」

舞台は刑務所の出所口らしきセットに変わり、刑務所出口周りに女性数人が待っている場面。そして続々と刑務所から出てくる男性も数人(人数は曖昧)。ここはそれぞれの人生が垣間見れて想像を掻き立てられるので少し好きな場面。涙を流しながら男性と女性が抱き合っていたり、子どもを抱えた女性に嬉しそうに近づいていく男性だったり、やっと会えた、と言っているかのように嬉しそうな男性とは正反対に涙を流してその男性を拒絶し体を叩く女性だったり。色んな人の喜怒が混じり合っている場面。そんな人たちが続々とはけていく中、最後に出てきたのはジョン。まさかのジョンの出所。出所だというのに彼の表情から喜びなんてものは感じられず、出口にメアリーの姿はない。代わりに怪しげな男二人組がいて、出所したジョンは迷いなくその二人に近づいていく。セリフはないが、一人の男が紙袋に包まれた何か(というか十中八九拳銃でしかないが)をジョンに渡し、ジョンも躊躇なくそれを受け取り、男たちは去っていく。そんなやりとりが行われている中、上手から現れるメアリー。メアリーはジョンが紙袋を受け取る場面を目撃する。男たちが去っていくのを見届けていたジョンに「ジョン...!!」と声をかけるメアリー。メアリーを視界に入れたジョンの表情は暗いまま。むしろ先ほどよりも暗くなった気がする。愛するメアリーだよジョン...そんな顔しないでくれよ...。「男たちが釈放されるって聞いて...!なんで、言ってくれなかったの...?」と当然ショックを受けるメアリーに対してジョンは「メアリー。今日は帰らない」と俯きがちに一言だけ放つ。声色が闇堕ちしたジョンなのよ。そんな彼に対してメアリーは負けじと「明日は帰ってくるでしょ?」と問うけど、「そんな余裕はない、やらなきゃいけないことがある」と冷たくあしらうジョン。メアリーはこのジョンの言葉に顔を曇らせて、消えてしまいそうな小さな声で「...殺すの?」と問う。「...知らない方がいいこともある」というジョンに確信を持つメアリーはやめてと涙を滲ませ叫ぶけれど「俺は今夜のフェリーでロンドンに行く」と意思が固いジョン。メアリーちゃん後半泣き叫んでばかりで見ているこちらも苦しい。「ロンドンの人たちを吹き飛ばすのね...!」「何も言わない」このジョンの何も言わないの言い方が不謹慎だけどかっこよかった記憶。変わり果てたジョンに、まだ時間はあるでしょ?と、どうにかしても息子に会って欲しいと懇願するメアリー。そんな願いも虚しく「会わなきゃいけない奴がいる」と振り切るジョン。ここから更に辛い会話が続くんですよね。「あなたは前にもロンドンに行くはずだった...!サッカーのために!」「俺たちはサッカーなんてしてる場合じゃなかった!」「あなたもトーマスと同じようになる...何も感じず人を殺すようになる...」「俺は兵士なんだメアリー。兵士は人を殺すものだ」ねえ、これ私の知ってるジョンで合ってますか...?となってしまうほどのしんどい会話。個人的に、サッカーなんてしてる場合じゃなかった。が一番胸にきたかもしれない。愛と友情に溢れた輝かしい青春時代を、もういらないとゴミ箱に捨ててしまったような言葉。ジョンから出てくる言葉たちがメアリーに向ける刃物でしかない。「息子を置き去りにして...」のメアリーのセリフから続けて始まる「すべての愛(リプライズ)」。同じメロディで「永遠の闇の中でも 永遠の愛を捧ぐ すべての愛をあなたに」だった歌詞が「勝ち目のない戦争へ 行かないで お願い」に変わってしまった悲しみ。田川くんもSNSで綴っていたけど、永遠の愛を誓い合った時の歌でジョンを引き止める演出がずるい。泣いちゃう。「あの子は誇りに思う 戦うパパのことを」なんて歌うジョンだけど、愛のもとに生まれてきた彼はきっと、戦うパパではなく、愛に溢れるパパを求めているよ...。「君を大切に思う」でメアリーから距離を取って「それでも行くなんて」でメアリーがまたジョンに歩み寄る。また距離が近づいた二人。ジョンは「心の中にいる すべての愛をあなたに」とメアリーの目を見て歌いあげる。「デッド・ゾーン」で「愛も憎しみに変わる 泣き喚いてもこれがお前の運命」なんていう歌詞があったけど、愛する人のために生きると一度誓ったジョンは、たとえ人が変わったようになってしまっていても、メアリーに「心の中にいる すべての愛をあなたに」と歌えてしまうんだよな。メアリーへの愛は捨てきれないジョン。ここもまたずるい彼の好きなところ。歌い上げたジョンは持っていたボストンバッグを下におろし「渡しておきたいものがある。本当は向こうに着いてから送るつもりだった」「ショーンが大きくなったら渡してくれ。父親からって」とメアリーに差し出したのは、背番号10番、エメラルドグリーン、ジョンのユニフォーム。「...わかった。私も渡したいものがある」そう言ったメアリーに、ジョンがイギリスへ行くことを飲み込んでしまったのかな、と少し切ない気持ちになる。メアリーが渡したいものは「写真の中の少年たち」の場面でチームみんなで撮った集合写真。「今こそ、この写真を見てほしい」そう言って写真を差し出すメアリーに、顔を渋らせ受け取りたがらないジョン。それでも無理やり渡すメアリー。ジョンが受け取りたがらない描写も辛い。めちゃくちゃ嫌そうな顔するんですもん...。そしてこの後のメアリーのセリフが心に突き刺さってくる。もちろん、ジョンの心にも。「この写真の男性が、ショーンの父親。私が結婚した人...!」そう涙ながら叫ぶメアリー。次の瞬間BGMが途切れ、静寂の空間に変わる。「...その人は死んだの」「ジョン...あなたが殺した...!」「彼はあなたの最初の犠牲者...!!」「サッカー選手のジョン・ケリーは、テロリストのジョン・ケリーに殺されたの...!!」静かな空間に響き渡ったメアリーの悲痛な叫び。思い出すと涙腺が弱くなるほどの場面。ジョンに思いの丈をぶつけ、涙を流しながらユニフォームを握りしめ去っていくメアリー。そんなメアリーの背中を見ていたジョンは何を思ったんだろう。写真を捨てることはせず、ポケットにしまい、ジョンもまたこの場を去っていく。自分を殺して、愛する人を置いていく。そこまでして得るものなんて何があるだろうか。この感情こそ、こんな戦い勝たなくていい、ということなんだろうな。そこまでしても戦争を愛するあちら側の彼ら。戦争の深みを感じざるおえない。

 

「♪It Will Never End 終わらない(ジョン/トーマス)」

バーカウンターに一人座り、観客側に背を向けるトーマスの場面で明転。そこに無言で現れ、トーマスに近づいていくジョン。そんなジョンに気づいたトーマスは「ジョン!出所したのか!良いニュースだ!」と嬉々とした声色と表情でジョンの釈放を喜ぶ、が、それとは反対に表情を変えず低いトーンで話を始めるジョン。「トーマス、なぜ俺がここにいるかわかるな」と問うジョンに「さあ?」ととぼけるようなトーマス。「我々は鉄格子の向こうからお前を監視してた。なぜ俺たちと合流しなかった?」「おそらく俺はお前より賢い」「それは疑いようもない」ここの一連のやり取りのテンポが好き。疑いようもない、とジョンが返すと乾いた笑い声をあげるトーマス。なんだろう、このトーマスの笑い声には人間味を感じなかった。まるで血の通ってない何かのような、何かに取り憑かれているような。彼が戦争に取り憑かれているのは疑いようもない事実ではあるが(疑いようもない使いたかっただけ)。ここからの二人の会話はダニエルのことについて触れる。「俺はダニエル・ギレンのことも知ってる。お前は罪のない人間の膝を撃ち抜いた」「罪のない?あの男が?」ジョンが罪のない人間、と言った瞬間に、初手観劇だった私はほっと胸を撫で下ろしたのを覚えてる。ダニエルはやっぱりそんなことをするような男ではないのよ。一瞬でも疑ってごめんなの気持ちになる。「あいつは俺を裏切ってない。国家に対して反逆罪も犯してない」「あいつは薬の売人だった。憐れむ必要はない」この後のジョンのセリフは、闇堕ちしまった彼の中にもある正義が垣間見える言葉。「ダニエルは天使なんかじゃない。でも、あいつは俺を裏切らなかった!...裏切ったのはトーマス、お前だ」真っ先に思うのは、ダニエルは可愛いので天使でもありますよ。という物語を語る上では不必要な私感。こちらは置いといて、彼の中にまだ確かに残っている愛が、兵士になってしまった彼の正義に影響を与えている、と感じざるを得なかったセリフ。誰かにとっては悪魔か何かであろうと、自分を裏切らなかったダニエルを傷つけたお前を許さない。というジョンの正義。まだメアリーが愛するジョンは心の中に生きているよ...。ここからの会話は、ジョンを裏切ったトーマスの、賢くも酷く寂しい理由。この辺りからトーマスから完全に笑みが消え始める。「お前は自分の罪をダニエルに擦りつけた...!」「もしそうならそれなりの理由がある」「どんな理由だ!」「そうしなければ俺が捕まったかもしれない、だから取引したのかもしれない」「お前は俺を密告した...!」「共和国はお前の自由より俺の自由に価値があると思ったんだろ。戦略上の決定だ」笑みを消し淡々と話すトーマスと、感情に火がつき語気に荒っぽさが混じり出したジョンとの対比が良い。手に持った酒を一気に飲み、突然愉快そうに話だすトーマス。「悪く思うなよ!俺は俺という兵士を救い、更にお前という兵士を生み出した!ははっ!悪くない働きだろ?」「お前は裏切り者だ!」「それがどうした?」ここがなあ、それがこの世界では当たり前に行われてることだ。何も不思議じゃない。みんなやってることだ。とでもいうような言い方なのがなあ、あちらの世界の住人という感じがする...。何も感じず考えず人を殺すようになる。メアリーの言葉がぴったり当てはまってしまう。「俺たちは戦争中だ。汚れた戦争、非合法の戦争」「名誉ある戦争だ!」このジョンのセリフの後、今まで淡々と言葉を返してたトーマスが突然感情的になるのがやっと彼に人間味を感じられて好きだった。「名誉なんてものは!......ない!」「俺たちはカトリックだがロシアの共産主義から銃を入手する。俺たちは社会主義だがアメリカの資本主義から金を受け取る。イギリス人は俺たちと話はしないがダウニング街には招待する」続けてこの戦争自体が取引なのだと、大規模で奥深いゲームなのだとトーマスは言う。「これが反乱と革命の本質だ」と言いながらジョンの髪を掴んでわしゃわしゃとするトーマス。トーマスの賢い話を聞いた後も苦しそうに「なぜ俺を密告した...!」と声を荒げるジョンは、ただただ友達だったトーマスに裏切られたことがショックだったのだとよくわかる。「俺らは秘密部隊だ、俺は警察にコネがある。コネは維持する必要がある」ここからトーマスが見てる戦争の本質を感情的に表現するシーンへ。「お前は戦争をなんだと思ってる...?勝つまでイギリス人に攻撃するとでも思ってたのか!」「そうだ!」「そんな甘い考えは捨てろ!!」「俺たちはな!絶対に勝つことはない!...この戦争は、終わらない。終わるわけないだろ!俺たちは絶対に降伏しない!奴らも降伏しない!...俺たちは、勝つために戦ってるんじゃねえ!奴らの勝利を阻止するために戦ってるんだ!」熱い熱いトーマスの感情が突き刺さってくる。言葉の所々に入り込むヒュッとなる呼吸音が苦しかった。「じゃあ何のための戦争だ!」「やっとわかってきたなジョン!革命家らしい発言だ!」この後のトーマスの言葉があまりに深すぎてずっと考え込んでた。「俺たちがこの戦争を次の世代まで続けられたら、その時が俺たちの勝利だ」と。実際三十年にも及んだらしいこのカトリックプロテスタントの対立による戦争の本質。これはトーマスが生きてきた中で見つけたものではあるけれど、これも本質に含まれる一つなのではないかなと無知ながら私はそう感じた。このトーマスの言葉の後、少し不気味なメロディで始まるのが「終わらない」。「終わらない 戦争は」と悲壮感のあるジョンの悲しい歌声と「諦めることだ 終わらない 殺し合い」の諦念に満ちた広く伸びるトーマスの歌声の対比。ここからしばらくトーマスソロ。とんちゃんの歌声に圧倒される場面。「平和のため人を殺す 死んで初めて 生きること学ぶ」の高音と声の伸びで毎回鳥肌。そして舞台も後半戦になっていくにつれて、ここのトーマスの歌声が震えているのが良かった。「愛のため」「いや戦争を 愛してる 考えろ」ここの「愛してる」が力こもってて、トーマスがどれほど戦争というものに取り憑かれているのか窺える。「殺しが殺しを呼ぶ 悪が蔓延る 神の子どもを殺す 神のため 人のため」この歌詞、まさに彼らが生き抜く世界そのまま表現されたものだなと。「いつかわかり合える日が」「ありえない 犠牲者が 増えるだけ 終わらない」のトーマスパートでこの曲が終わる。この歌、ジョンのパートが「終わらない 戦争は」「愛のため」「いつかわかり会える日が」の三箇所なのですが、あまりにジョンだなあという感じですよね。歌声が闇堕ちジョンとはまた違う声色なのも相まって、少しずつ本来のジョンが戻ってきているように感じる。曲終わり「トーマス、お前みたいな奴は共和国には要らない」ジョンがそう言ってトーマスに銃口を向ける。それなのに当のトーマスは「そうだな。俺はいらない」と静かに冷静にそう言葉を吐くのが見ていて怖かった。血が通っていない人間の声色だった。「今はもう、お前がいるから」そう言い放ったトーマスに無言の時間が流れる。この時、銃を持つジョンの手が震えていて非常に生を感じた。「どうした?撃てないのか? お前を過大評価していたな」の少し震えたトーマスの声の後「トーマス...!今のお前を撃つことはできる......でも昔のお前を撃つことができないんだ...!!」このジョンの叫びで一気に涙が浮かぶ。今のお前は〜の後の空白の時間が彼の葛藤を物語っているし、何より次の「俺たちは友達だった...俺たちはサッカーをした...!」涙ながらのこの叫びも更にグサグサとトーマスとこちら側の胸を突き刺さしてくる。そうだよな、そうなんだよ。二人は友達で、一緒にサッカーをして、きらきらした青春時代を共に過ごした。一つ違えばこんな未来はこなかったはずなのに。それでもこの二人がこの結末を迎えることに対してある意味 美しさ を感じてしまう自分もいて苦しい。このジョンの言葉の後、顔を拭って吐き出す声、言葉が昔の人間味あるトーマスで更に涙腺を刺激する始末。「ジョン...!心配すんな!もう俺の正体わかっただろ...?」「俺は、お前以外にも警察に売ってる」所々詰まりながら震える声。ジョンの言葉でこのひと時だけ昔のトーマスに戻れたのかなと思うと、彼らの友情が深くて熱くてたまらない。「俺は次の誕生日まで生きられない...。明日の夜明けまで生きてるかもわからないんだ...」とボロボロ涙をこぼしながら自分が置かれている状況を嘲笑うかのように話すトーマスにこちらも涙が止まらなかった。次の誕生日まで生きられない。そうわかっていてもなお立ち向かい続けるトーマスの貫いた正義。誰も彼を悪役だ、なんて言えない。彼は彼が信じた正義を生き抜いただけなのだ。「俺には行くところがある」銃を下ろして足早に去っていくジョン。あっさりとした彼らの最後。けど、最後の最後は、友人だったジョンとトーマスで会話できていたように感じられて、ジョントマが尊いオタクにとっては心が震えるシーンでした。

そしてこれでこの場面は終わらない。残りの数分は全部無言なのだけれど、セリフなしでやるからこそ意味があるシーンだった。

ジョンが去り、一人になったトーマスは、涙を拭いながらフラフラとバーカウンターに座り直す。そこに現れたのは怪しげな男二人。二人はトーマスに近づき、男 トーマス 男 の形で椅子に座り彼を挟む。数秒そのままで、突如トーマスが椅子から立ち上がり逃げようとする、が、逃げられるはずもない。全てを悟ったトーマスは、天を仰いで息を吐き、メガネをバーカウンターに置く。そのまま男二人と共に去っていくトーマス。この時、大千穐楽かその前の公演かどちらかで涙を拭ってたのが印象的だった。舞台上から消えたトーマス。次に聞こえてきたのは会場に響き渡る乾いた銃声の音だった。

このシーン怖いのは、トーマスを殺した男の一人は、学生時代トーマスと一緒にいた悪ガキ三人組の内の一人、ハリーだということ。残酷な世界。トーマスはきっとハリーに対しても、ジョンにしたのと同じように裏切ったのだろう。この話がミュージカル後半、出演者のSNSで発覚した時ものすごい衝撃だったな。裏設定がしっかりと作り込まれているからこその、この物語の完成度の高さなんだろうなと、感服。

そして初手観劇の時は感情の昂りがあまり感じられなかったこのシーンのトーマスだったのですが、公演数が残り少なくなるにつれて、トーマスの揺れる心と高ぶる感情が垣間見えてすごく良かった。涙をボロボロこぼして拭ったり、声が震えていたり。初手観劇では感じられなかったものを感じられた。せめてジョンに殺してもらうことが彼にとって唯一の救いで、願いだったのではないかなと。そう勝手に解釈してしまうくらい、ジョンが去った後のトーマスが苦しそうでな...。愛を捨て、手を汚しすぎたトーマスは、ジョンに殺されることすら叶わない。

余談ですがこのバーカウンター、「パーティ」のシーンと同じセットになっているのだけど、同じような設定のセットを複数も作るわけがないというのは承知の上で、もし、この「終わらない」場面のバーと、「パーティ」場面のバー、どちらも同じ店だとしたら、哀楽の対比がうますぎて震えてしまうな、と。そんな勝手な想像もあって同じ店であれと願っているTBGのオタクです。もし本当に同じ店設定だったら苦しくて泣いてしまうな。

 

銃声と共に暗転した舞台上はセットが変わり、カモメの鳴き声と船の汽笛が聞こえる場所へ。恐らく船に乗り込もうとするために海の方へ向かっているジョンが現れる。歩いている途中、ふと立ち止まったジョンは、メアリーに無理やり渡された写真をポケットからおもむろに取り出した。その写真には青春を共にした仲間たちが写っていて、この写真を撮影した時にオドネル神父が残した言葉たちがジョンの脳内で再生されたのだろう。神父様が舞台上に現れてあの時の言葉を復唱する。これは実際にジョンの目の前に神父様が現れたわけでなく、おそらくジョンが記憶を回顧しているよ、という表現。「この写真を見れば、あの頃自分が何者だったのか思い出せるだろう」「世界は憎しみで満ちているが、そんな世界で堕落するな、負けるな。自分に正直でいろ。青春時代の約束に忠実であれ。この写真に写っているのが本当のお前だ。どんな大人になるかはお前たち次第だ」今こそ、この写真を見るべき そう言ったメアリーの気持ちがよくわかる。これでジョンが立ち止まって引き返してくれたらいいのに。そう思うけど、回想役割だった神父様が立ち去った後、写真を再びポケットにしまったジョンはそのまま歩いて行ってしまう。初手観劇の時は、一体どんな感じで終わるの...?と考えてたなあ。トゥルーエンド的な感じで、もうジョンは戻ってこないものだと。

 

「♪The Beautiful Game Finale フィナーレ(ジョン/メアリー/全員)」

ついにフィナーレ。場所は恐らくメアリーの家。ベビちゃんが寝ているであろうベビーベッド(?)の横の椅子に腰掛けるメアリー。ジョンと同じくあの写真を見ながら切なげなバックミュージックの中、こちらに語りかけるような口調で話し出す。輝かしい思い出を振り返るように話すのは、悲しき結末を迎えた彼らのお話。「ジンジャー・オショーネシー、死亡。ダニエル・ギレン、障がいを負う。トーマス・マロイ、死亡。デル・コープランド、逃亡。ジョン・ケリー、殺人のために去っていった。そして私は一人」悲しみに満ちた声で一人一人名前を呼んでいくメアリー。その後ろでは、ジョン以外のメンバーが早着替えで登場。最初見た時は映像を投影してるのかと思ったけどしっかり本人たちらしい。トーマスがあの重苦しいシーンから一転、ユニフォームに早着替えしてるのかと思うと可愛くて少し笑っちゃう。「生きるに値する人生を奪われた」と、戦争への批判を強く言葉に表したメアリーは「愛が、私を満たす」「月と星が出会う」と結婚式で歌った「すべての愛」を酷く優しい声で歌うんですよ。そして「心の中にいる すべての愛を...」と声を震わせながら歌うけれど、ベビちゃんの前でそのまま泣き崩れていくメアリー。ううう、、苦しい苦しい、、、と思ってたら、段々とバックミュージックのメロディの音量が上がっていくんです...。盛り上がってくるんです...。あ、あ、もしか、して、、?と思った次の瞬間、上手からジョンが現れるの...!!「この広い宇宙で 燃える星の上 この旅路は終わらない 永遠に」と涙ながらに歌うジョン、ジョン...。歌声があまりに優しい。反則だよ...。結婚式の時に歌った「すべての愛」と同じ声色なんですもん。間違いなく、彼はジョン・ケリー。もうここからこちらの涙腺大爆発。「ジョ、ジョン...っ!!!」と涙まじりの叫び声をあげて、ジョンに駆け寄っていくメアリー。二人は熱く熱く抱きしめ合う。ここでキスするんじゃなくて、おでこを引っ付け合って心底愛おしそうな表情でお互いを見合ってるのが本当に良かった...。「すべての愛を あなたに」と二人で声を重ねて歌うの。ジョンメアちゃん、なんて最高の終わり方...。二人の愛は永遠で、一生お互いに自分の持ち得る限りの愛を注ぎ続けるのだと思うとこちらまで幸せで胸がいっぱいになっちゃう。そして体を離した二人。メアリーがジョンを息子の元へ誘導するんだけど、この時のメアリーの笑顔が心底幸せそうで泣けてくる。息子の顔を見たジョンもたまらなく幸せそう。コートを脱いだジョンは、優しくゆっくりと我が息子を抱き上げる。この時点でジョンの手は汚れていないんだなと解釈した。見方によっては、ジョンはあの後一度旅立ち手を汚した後に帰ってきた可能性もある、という見方もできるのではないかと思うけれど(時間経過のギミックが特にないので)、ジョンは汚れた手で息子を抱き上げるような人間ではないよなという。私的な願望も含まれる解釈ではありますが...。釈放後のジョンが「ショーンが大きくなったら渡してくれ」と言ってるのが何よりの証といいますか、きっと彼は汚れた身では二度とメアリーと息子に会うつもりはないんだなと感じ取れるので、汚れた手ではメアリーと息子に会いに行かないジョン解釈で押し通したい...!()

色んな解釈あってこその物語なので他解釈にどうこう言うつもりは毛頭なく(全く違う解釈の方がいたらそれはそれで楽しいし好き)、私的ログなので好き勝手言うのを許してほしいというやつです。

息子を抱いたジョンに浮かぶ涙。綺麗だったなあ。これぞフィナーレ!という感じで、息子を抱いたジョンとそのジョンの腕を掴み幸せそうなメアリーがセンターの位置に来て、バーナデット、オドネル神父ら他の仲間たちがその二人を挟み込み歌う全員で最後の「The Beautiful Game」。みんなに迎えられるこのフィナーレ、あまりにジョンが主役で泣いちゃった。ジーンとくる終わり方。最初と最後の曲が「The Beautiful Game」だったから日生からの帰り道、この曲が永遠に頭から離れなかったよ、懐かしい。

最後の最後は小瀧望くん。全公演のカテコがスタオベだったと聞いて鼻高々(誰)

千穐楽の座長 小瀧くんの言葉すごく良かったなあ。「夢のような気持ち」だと言葉にしていて、ああ このまま夢のようなこの空間に取り残されてしまいたい と思うほど、The Beautiful Gameに魅了された一ヶ月だったなあと。

 

ではでは総評します。

私的にこの物語の主役はジョンではなく彼ら全員だと思っている節があるので、ハッピーエンドと受け取ることが一生できないんですよね正直。フィナーレの最後、あそこにいて欲しい人達がたくさんいすぎて辛いんですよ。ダニエルも車椅子でいいからいて欲しかったなあとか。デルとクリスティンも顔見せてほしかったなあとか。もっと言うと、ジンジャーとトーマスがいてくれたら、なんて。諸々を踏まえると、ジョンメアちゃん幸せトゥルー(ほぼバッド)エンドなんですよね。バーナデットは最後まで一人、ずっとジンジャーを愛しているのかと思うと非常にしんどい...。最後まで誰もお相手がいなさそうなのが突き刺さる。ジンジャーを愛し続けてるバーナデットのスピンオフはないでしょうか...。きっと私のど性癖だと思うのです...(報われない恋愛大好きオタク)本当に、メアリーにはジョンだったように、バーナデットにはジンジャーだったんだよなって。悲しさの加速がすごい。全然ハッピーエンドじゃない()

けどやっぱり自分を殺さずに済んだジョンが家に帰ってきてみんなに迎えられるラストシーンは流石にきゅんとなる。あの瞬間はジョンが主役だなあ。「この憎しみの連鎖を止められるのは、愛だけ」まさにジョンとメアリーのお話だなって思います。

 

そして物語を総じて簡単にまとめてしまうと、これは各々の愛と正義の形が交差するお話だな、と。一人一人の愛と正義が交わったり、互い違いになったり。言ってしまうと私が身を置いているこの現実と同じなんですよね。だから遠いお話のように思うけど、身直に感じるのだなと思いました。身近に感じるし、他人事の目線で私は見れなかったし、世の中ってこういうものだよなと。改めて平和な世の中の有り難さに気づかせてくれた物語でもあった。けどやっぱり簡単に一言でまとめられるような物語ではないなというのが正直なところ。ちなみにダニエルのこと、裏設定を知ってしまったのはいいものの、これは私が見かけた方が自らの力で手にした情報だと思うので、ダニエルのお話はここには残さず、私の中だけに留めておこうかなと思います。

 

色んなとこからセリフとか歌詞を探し出したり、毎公演後必死に記憶にある限りメモに残し続けていたものを掘り出して、なんとか自分のためだけのThe  Beautiful Game録が完成した。完成したよ。達成感がすごい。こんなにも心を動かされて魅了されて、言葉を綴りたいと思った作品に出会ったのは初めてかもしれない。小瀧くん、君って人は本当にいつも私の人生に大切にしたいものをくれる。改めて38公演走り抜けおめでとうございました。人生初めてのミュージカル、あまりにど迫力すぎて一公演が終わって次の公演に入るまで、金縛りにあったかのように動けない状態に早く陥りたい、TBGの世界の音楽と演技で心をズタボロにされたいと思ってしまうくらい魅力的で吸引力が恐ろしいミュージカルでした。小瀧くんってただの甘酸っぱい恋愛話なんかじゃなくて、重すぎて抱え切れないくらいのしんどい爆弾背負ってる主演ばかりで、小瀧くんをキャスティングしてくださってる方非常に私と趣味が合う...!固い握手を交わしたい...!これからもどうか彼に不憫な役をお願い致します。(我が癖)

 

約一ヶ月、ジョン・ケリーとして強く熱く生き抜いた君を心の底から誇りに思うよ。あのベルファストで生き抜いたすベての人たちが、どうか、幸せな世界でこれからも生き続けますように。少なくとも私の中でみんな生き続ける。どうか、どうか、幸せでいて。

 

最後までご高覧頂きまして有難うございました。

 

心の中にいるすべての愛を小瀧くん、あなたに!

 

2023.4.13 るり